シスメックス株式会社の特殊医薬品ロジスティクスの構築事例をご紹介
https://www.sysmex.co.jp/index.html
代表者氏名:代表取締役会長兼社長 CEO 家次 恒
所在地:〒651-0073
兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号
シスメックス株式会社の特殊医薬品ロジスティクスの構築事例をご紹介
電気機器
高価・現品
出荷業務
シスメックス株式会社は、患者さん一人ひとりのQOL向上に貢献する検査・診断技術を提供するヘルスケア企業です。血液や免疫、遺伝子検査、ゲノム解析など最新テクノロジーによる臨床検査製品とサービスを国内外へ提供しています。これらに用いる試薬には、超低温帯での冷凍保存が求められるものが増えています。CO2排出や環境への影響を最小限に留められ、自社で運用可能なロジスティクスをヤマト運輸と共同開発されました。その背景や効果について、SCM本部 SCM戦略部長の大山康浩様に伺いました。
課題 |
特殊医薬品の輸送にはチャーター便を利用する必要があり、管理技術やコストのコントロールが難しかった。そのため、安全でサステナブルなコールドチェーンの構築が急務であった。 |
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取り組み |
ヤマト運輸との共同開発により、-70℃の超低温帯で保持が可能な、特殊医薬品輸送のためのコールドチェーンを開発した。 |
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成果 |
輸送コストが1/2に削減。また新たな梱包資材により、ドライアイスの使用量を1/2に抑え、CO2排出を削減。全国の医療機関への効率的かつ安心・安全な試薬輸送が可能に。 |
課題
特殊医薬品の輸送にはチャーター便を利用する必要があり、管理技術やコストのコントロールが難しかった。そのため、安全でサステナブルなコールドチェーンの構築が急務であった。
取り組み
ヤマト運輸との共同開発により、-70℃の超低温帯で保持が可能な、特殊医薬品輸送のためのコールドチェーンを開発した。
成果
輸送コストが1/2に削減。また新たな梱包資材により、ドライアイスの使用量を1/2に抑え、CO2排出を削減。全国の医療機関への効率的かつ安心・安全な試薬輸送が可能に。
新型コロナウイルス感染症のワクチンは-70℃を保ったまま輸送する必要があるという情報は、テレビやニュースで大きく取り上げられました。このような超低温帯の厳格な温度管理が要求される「コールドチェーン」の輸送ニーズが、いま増加しています。
シスメックスでは、検体検査に必要な検査機器、試薬およびソフトウェアを医療機関にお届けしています。超低温帯での管理が求められる特殊医薬品の需要が近年増加したため、より安定的で安心なロジスティクスの改善を必要としていました。
「どんなときも医療を止めないためには、医薬品の安定供給は絶対に必要です。新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックが起きても供給が滞ることなく、世界中のお客さまに届けなければいけません。そう考えたとき、商品の調達、生産、倉庫を自社でコントロールできていても、お客さまの手元にお届けするロジスティクスを外部に頼り続けるのは、戦略的にも、安全面の観点からも課題と考えました。そこで、コールドチェーンを経営課題のひとつと捉えてプロジェクトに着手しました」(大山様)
特殊医薬品のコールドチェーン構築の要件は高く、幅広いものでした。シスメックスでは、ヤマト運輸が、遠隔治療を受ける個人宅まで届ける医薬品流通などに力を入れているとの情報をキャッチしました。ヤマト運輸の医療を助けるソリューションへの取り組みが、「医薬品を安心・安全に運びたい」というシスメックスのニーズと合致し、GDP※1に準拠した超低温帯で試薬を運ぶロジスティクスの共同開発へと至りました。
※1:GDP…Good Distribution Practice。医薬品の適正流通基準
ロジスティクスの構築においては、大きく4つ難関を乗り越えました。
1)医薬品のリアルタイムモニタリング実現
荷受けから納品まで、温度や湿度、照明、振動による衝撃の状態を、すべてリアルタイムにモニタリングが可能となり、商品の廃棄低減へとつなげました。
2)混載便を使ったGDPへの準拠
GDPへ準拠するには、他の荷物から完全に区別する必要があり、ヤマト運輸のネットワーク内で長距離区間に混載便を使いながらも、エリアクリアランス※2の確保を実現しました。
※2:エリアクリアランス…トラック庫内で混載はしても専用資材などで他の荷物と完全に区別して輸送している状態
その結果、チャーター便からヤマト運輸での輸送に切り替えることができ、輸送コストを1/2と大きく削減することができました。
3)超低温帯を維持する新しい資材の開発
超低温帯の保冷には通常ドライアイスが使われますが、ドライアイスは石油精製の結果得られるCO2を使用するもので、環境負荷をかける資材です。夏場は需要がひっぱくするため供給が不安定でコストもかさむなど、SDGs上、経営課題上の両面から削減を目指していました。
結果、新しく開発した梱包資材では、ドライアイスの使用を従来の1/2に削減できました。ドライアイスを使用せずに-65℃以下を48時間維持する実験にも成功することができました。
4)ラストワンマイルにおけるオペレーション対応
ヤマト運輸のセールスドライバーが正確に納品先に試薬をお渡しできるよう、世界基準「GDP」について社内教育で理解を深め、標準作業を理解・徹底できるようにしました。
「温度管理が大切なだけに、短時間で予冷した輸送箱をもってお客さまのもとへお届けし、開封作業、PCを使ったロガーの確認作業、輸送資材の引き取りまでをスムーズに行っていただいています。輸送資材についてはその場で持ち帰るため、お届け先の担当者の負担も軽減され喜ばれています。期待値は100点満点中、120点くらいと感じています」(大山様)
この特殊医薬品のためのコールドチェーンは2021年2月より本格運用が開始され、開発を通じて得られた超低温帯輸送技術は、日本国内での新型コロナウイルス感染症のワクチン輸送にも活かされています。
コールドチェーン運用がはじまった今、大山様にさらなる展望を語っていただきました。
「現在は本社と医療拠点とを結ぶ輸送ですが、今後、全国の医療拠点への展開を考えているほか、新型コロナウイルス感染症がきっかけで病院に行けなくなった患者さんの自宅に直接試薬を届けるようなケースも、十分に想定できます。これもラストワンマイルに強いヤマト運輸であれば、展開可能と期待しています」(大山様)
価値の高い試薬をグローバルに届けるため、アジア拠点へのロジスティクス構築は目下実現を目指す課題です。輸送環境が過酷な中国のGDP基準もクリアしたヤマトの輸送技術をアジア、中国そして世界へ特殊医薬品を届けるために利用したい、とのことです。
また、より多様な温度帯への対応にも期待を寄せます。
「一人ひとりの患者さんに合った治療を提供するための個別化医療の社会実装に必要な検査や再生医療など、今後、超低温帯での輸送が必要とされる分野はさらに増えます。次は-120℃以下となる極低温帯の輸送を可能にしたいですし、資材の完全なドライアイスレス化や、より簡便でコストダウンが可能なRFIDによるログ管理などを実現していきたいです」(大山様)
今後は、特殊医薬品の超低温帯輸送のための業界スタンダードを作り上げ、安心・安全に医薬品を届ける枠組みの共有を目指しています。
「レジリエンスの高いサプライチェーンによって、がん、アルツハイマーなど長期治療が必要となるたくさんの患者さんが、一人でも多く、一日も早く、より自分にあった治療方法を見つけ、QOLの高い毎日を送っていただけるようになることを願っています。
そのために欠かせないのが、最新医療を必要とする患者さんの手元へ特殊医薬品を届ける手段です。今後もヤマト運輸と一緒に安心・安全なロジスティクスの開発・実用化を進めていきます」(大山様)
※掲載記事の内容は取材当時のものです。
https://www.sysmex.co.jp/index.html
代表者氏名:代表取締役会長兼社長 CEO 家次 恒
所在地:〒651-0073
兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号