ECサイト運営マニュアル~開業準備や開業後の業務、改善・効率化のノウハウ~

ECサイト運営マニュアル~開業準備や開業後の業務、改善・効率化のノウハウ~ ECサイト運営マニュアル~開業準備や開業後の業務、改善・効率化のノウハウ~

ECサイトを運営してみたいけど、専門的なスキルやノウハウは必要?と思っている個人や小規模EC事業者の方へ。
自社ECサイト開業後の更新頻度や売上をアップさせる効率的な運営の流れや注意点についてわかりやすく解説します。

ECサイト運営に必要な業務・分類と整理

ECサイトのトップが「ホーム」と呼ばれているように、ECサイトを運営する仕事は自分の家に客人を招き、もてなすこととよく似ています。

しかし、いざ開業してみると、個人や小規模ECサイト運営担当者は日々のルーチン業務に追われがちで、大切にすべき「おもてなしの気持ち=購入者の目線で考えること」がおろそかになり、「すごく忙しいのに売上が上がらない」という悪循環に陥ってしまうことがしばしばあります。そうならないためにも、ECサイト運営に必要な業務を一旦整理して、効率良くすすめる方法について考えてみましょう。

ECサイトの運営に必要な業務を具体的に書き出すと、主に次のような項目があります。

<ECサイト運営に必要な業務(一般的な例)>

  • 商品マスター管理、撮影、文章作成
  • サイトデザイン、機能カスタマイズ
  • 受注管理、入金確認・顧客対応
  • 在庫管理、検品、発送
  • 売上管理、発注管理
  • 顧客管理
  • アクセス解析
  • 集客、販促プロモーション
  • ブログ更新、SNS
  • 経理、帳簿作成

この中には、
「A:作業量が多く重要だが、パターン化すれば委託できる仕事」と、
「B:情報設計やデザインの方針・販促企画・分析と改善など、サイトの未来を決定する仕事」があります。

たとえば、4.の在庫管理、検品、発送の大半はAタイプの仕事ですが、「出荷時に添えるサンクスカードにどんなメッセージを書けばリピート購入につながるのか?」と考えることはBタイプの仕事となります。
どちらも大事な仕事ですが、Aタイプの仕事は分業化や外部委託により効率化を図って、その代わりにBの仕事に時間をさけるように工夫したほうが良いでしょう。

そもそもECサイトとは?業務一覧の解説はこちら

成長プロセスによる業務整理

ECサイトの成長プロセスによっても、優先して取り組むべき仕事内容が異なります。前述した10の運営業務は下表のように分類することができます。

成長プロセス 10の運営業務 分類
ECサイト構築中 サイトデザイン・機能カスタマイズ
商品マスター管理・撮影・文章作成
ECサイト制作
ECサイト開業直後 在庫管理・検品・発送
売上管理・発注管理
受注管理・入金確認・顧客対応
顧客管理
運用体制作り
開業後の販売拡大 ブログ更新・SNS
集客・販促プロモーション
集客販促
事業のブラッシュアップ アクセス解析
経理・帳簿作成
課題診断

業務別・年間運営スケジュール

ECサイト開業直後に注力すべきポイントは、オペレーションの確立です。最初の1、2ヵ月で、物流・受発注・顧客管理などの運用体制をしっかり整えましょう。

集客面では、開業後は早めに販促に取り組んで実績を作り、3ヵ月目あたりからきちんとしたアクセス解析がはじめられるようにすることも大切です。

開業して半年が経過した頃に注力すべき仕事は、上半期の課題診断を行うことです。それをもとに、下半期の業務を改善しながら実行し、1年後にはまた下半期と1年間の振り返りを行い、資金調達の計画なども見直しましょう。

ECサイトの現状に応じた運営改善・業務効率化

半年間という期間は、個人や小規模ECサイト運営担当者からのヒアリング結果などから導いた一つの目安です。大企業でしたら、3ヵ月単位などもっと短いスパンで試行錯誤を繰り返してECサイトの運営改善に取り組むことも可能でしょう。

ECサイト・開業の基本手順について、詳しくはこちら

ECサイトの現状に応じた運営改善・業務効率化

ECサイトの運営状況に応じて、開業準備の遅れや、開業後の売上の伸び悩み、事業が急成長したときに業務が追いつかなくなることなどがあります。よくある課題に対処する方法についてもチェックしておきましょう。

ECサイトの現状に応じた運営改善・業務効率化

現状1)開業準備の遅延にどう対応するか

ECサイトの根本的な情報設計やデザインは一度決めたらコロコロ変更するようなものではありません。開業直後に大きく変更することは避けたいので、開業する前に熟考を重ね、ユーザーテストなどもしっかりやっておくことが大切です。あらかじめ開業準備のスケジュールには多少余裕を持たせておきましょう。

現状2)売上の伸び悩みを改善したい

新しいECサイトが検索にヒットして認知されるようになるまで、少なくとも3ヵ月はかかると思っておいたほうがよいでしょう。もしも3ヵ月目あたりでまだアクセス数が増えないようであれば、SEO対策やコンテンツの内容を見直したり、SNS(InstagramやTwitter、LINE@など)の集客につながる窓口を増やしたり、Web広告を出すなどの集客方法を検討してみたほうが良いでしょう。

一方、アクセス数は伸びているのに売上が上がらない場合は、サイト内にコンバージョンを妨げる要因を見つけるために、再度ユーザーテストを行うのがおすすめです。その際は、ユーザーの斜め後ろに座り、閲覧行動が終わるまで何も口を挟まずにじっくり観察すると、たくさんの改善ヒントが発見できると思います。

現状3)急成長中の業務効率化の方法

急激に売上が伸びたときは、それまでに確立した運用体制の真価が問われます。受注が増えるほど運営担当者の手が回らなくなるような業務があれば、仕組みそのものを見直し、外注に切り替えるなどの方法で作業効率を改善する必要があるでしょう。

また、ECサイトが成長するに従って、顧客データやアクセス解析用データが増えて管理や分析が複雑になることがあります。大手企業であれば、ネット通販に効果的なITサービスを導入して、デジタルを駆使した顧客管理やアクセス解析を行うことで業務を最適化できます。

個人や小規模なEC事業者の場合は、やることを絞りましょう。主に、新規顧客・リピート顧客の数を把握して、それぞれに適したマーケティングを行うことや、購入者が流入・離脱した主要なページを把握して、コンテンツ内容の改善を心がけるのがおすすめです。若年層の顧客がメインターゲットの場合は、SNSやYouTubeなどを活用したWebマーケティング施策を試す価値もあるでしょう。

ECサイトの運営に必要なスキルとは

ECサイトの運営に必要なスキルを下表にまとめました。ECサイトの運営を一人で行う場合はかなり幅広いスキルが求められますので、覚悟して取り組む必要がありそうです。

10の運営業務 求められるスキル
サイトデザイン・機能カスタマイズ
商品マスター管理・撮影・文章作成
コンセプト設計・サイト制作・コーディング
プライシング・撮影・デザイン・ライティング
在庫管理・検品・発送
売上管理・発注管理
受注管理・入金確認・顧客対応
顧客管理
物流コスト管理・安全管理・リスク管理・スピード
進捗管理・商品コスト管理・需要予測・生産管理
正確性・コミュニケーションスキル
顧客育成・Webマーケティング・ライティング
ブログ更新・SNS
集客・販促プロモーション
ライティング・Webマーケティングスキル
企画力・行動力・Webマーケティングスキル
アクセス解析
経理・帳簿作成
データ処理力・分析力・提案力
経理スキル・正確性・資金運用

ECサイト運営担当者が一人しかいない場合、1つの業務を片端からやろうとしてもなかなか終わりません。そのため、タイプの異なる業務をいくつか同時進行させ、各業務を小分けにして優先順位の高いタスクから片付けていくほうが早く前に進めると思います。

一方、何人かのチームで運営する場合は、なるべく得意なスキルが異なるメンバーを招集して組み合わせると作業効率が良くなる可能性があります。

ただし、いくら得意分野だといっても単純かつ大量にある画像の切り抜き作業などを一人に任せてしまうと、モチベーションが著しく低下する恐れがあります。ルーチンワークの量が多いときは数人で少しずつ手分けして行うか、外注するのがおすすめです。

自らのモチベーションを高めながら、ECサイトの運営を成功に導きましょう。

ECサイト運営は大変?運営担当者のセキララ体験談

◆アパレル系ECサイト運営の体験談
細井さん(東京都在住 / 個人事業主)

ECサイトの運営歴は約8年で、商品はマフラーなどのファッション小物が中心です。会社員時代に自社ECサイトの立ち上げにかかわり、フリーになったときに「自分でもできそう」と思ったのが開業のきっかけでした。当時は契約社員としても働いていたので完全に副業感覚。「とりあえず開店してみよう」という感じでした。

CEP イタリアで作ったストールとマフラーのお店

CEP イタリアで作ったストールとマフラーのお店

初めの数ヵ月は全く売れませんでしたが、ふと「マフラーを売るなら巻き方も載せたほうが親切かも」と思いつきました。まだSEOやSEMという言葉は知らなかったけれど、商品以外の情報ページを増やすにつれてアクセス数と売上が増える手応えを感じました。

でも、何年か経つと「たくさん集客しているのにあまり売れない状態」になってしまったのです。売れない理由が知りたくてセミナーに参加し、ある方から「導線がない」ことを指摘されました。ECサイトを作る前によく練らなかったので、集客はできても売上が伸びにくいサイト設計だったと思います。自分なりに地道にサイトリニューアルをして、売れ行きを改善することができました。

8年の間にECサイトの状況は何度も変わりました。今もまた新たな課題が見つかっています。本当にECサイト運営は次から次へと学ぶことが出てきて、終わりのない世界です。大変で疲れてしまうこともありますが、サイトを訪れた購入者から反響をいただくと元気が復活します。日本のどこかにいる縁のなかった人達と突然つながって会話ができるのは不思議だし、この仕事のすごいところです。あとは、目が覚めて売上が増えているとすごく嬉しいですね(笑)。

まとめ

ECサイトの作り方のヒントは見つかりましたか?ECサイト運営の仕事内容や必要なスキル、効率化の方法などを紹介しました。初めに、ECサイトの仕事は「おもてなしの気持ち=購入者の目線で考えること」が大切だと書きましたが、それに加えて、コストや利益の計算ができて、業務内容を振り返って改善していくことがECサイト運営担当者に必須のスキルだと言えます。それさえあれば未経験でも、自社ECサイトを購入者と一緒に育てていくことができるはずです。

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