万が一の回収・リコールに備えて。 食品表示法から学ぶ企業に必要な安全対策とは?

万が一の回収・リコールに備えて。 食品表示法から学ぶ企業に必要な安全対策とは?

2022.03.22

食品を製造している企業や個人にとって、絶対に避けたいトラブルの一つ、食品リコール。この食品リコールの原因の中でも7割を占めるといわれているのが「不正表示」です。食品アレルギーの原因となる特定原材料や賞味・消費期限の誤表記といった、食品表示法の違反を原因とした食品リコールは、2021年だけでも200件以上発生しています。

加えて、食品表示法は時代に合わせて変化しており、直近では2017年9月に改正・施行された食品表示基準も、2022年4月(3月)に経過措置が終了。国内で製造する全ての加工食品に対して重量割合上位1位の原材料の原産地を表示することが義務化され、これまでと同様の対応では食品表示法違反になってしまうケースもあります。さらに2021年6月には、食品表示法の大元である食品衛生法が改正され、これまで自治体によって異なっていた食品リコールの報告について、改正後は意図や目的、状況などを行政へ報告することが義務化されています。

こうした変化に対応していくためには、食品を製造している企業や個人は、食品表示法についての理解を深めることが必要不可欠です。そこで今回は、そもそも食品表示法はどのようなもので、改正後に何が変わり、企業や個人がどのように対応していくべきなのかについて、注意点や重要なポイントを解説していきます。

そもそも食品表示法ってどんな法律?

食品表示法とは、消費者が安全な商品をわかりやすく選べるようになることを目的として、食品の安全性や機能性に関する表示について定めた法律のことです。食品を製造している企業・個人の目線でいえば、製造した食品を販売する際に表示しなければならない情報についてまとめられている法律といえるでしょう。その対象範囲は、農作物や畜産物、水産物や玄米・精米といった生鮮食品はもちろんのこと、加工食品も含まれており、消費者等に販売されるすべての食品に対して、食品表示をすることが義務付けられています。

この食品表示については、元々は「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」という3つの法律で定めていましたが、それぞれの法律の目的や性質が異なっていたため、食品表示の基準が複雑化。事業者にとっても消費者にとってもわかりにくいものとなってしまっており、さらに食品偽装や不当表示、中毒事件などが相次ぎました。そこで、複雑化したこれらの基準を一つにまとめ、誰にとってもわかりやすいものとして2015年に作られたのが、食品表示法なのです

近年の改正、今後予定されている改正による変更点は?

食品表示法は、時代に合わせて改正がされているため、その時々にあった食品表示にアップデートしていかなければなりません。食品表示法が改正されたことを把握しておらず、去年まで問題なしだったからという理由で同じ食品表示を続けていると、場合によっては食品表示法違反として、リコール・回収や重い罰則につながる可能性もあるため、十分に注意するようにしましょう。

食品表示法の近年の改正や今後の予定については、以下のようなものがあります。

精米時期表示の改正
玄米及び精米商品で表示していた「精米時期」表示を、「年月日」に加えて「年月旬」でも表示できるように改正。

玄米・精米の表示の改正
農産物検査法による証明を受けていない玄米及び精米であっても、根拠を示す資料の保管があれば、産地、品種及び産年の表示ができるように改正。

生水牛乳に関する表示改正
食品表示基準における「乳」の範囲に「生水牛乳」を追加するように改正。

指定成分等含有食品に関する表示の義務化
製造、加工又は輸入された指定成分等含有食品である場合、「指定成分等含有食品である旨」や「食品関連事業者の連絡先」など、指定成分等含有食品に関する表示を行うことを義務化。

食品添加物表示の改正(経過措置期間:2022年3月31日まで)
「人工甘味料」や「合成着色料」といった表示の用途名及び一括名から、「人工」・「合成」の用語を削除できるよう改正。

食品リコール(自主回収)情報の報告を義務化(2021年6月1日施行)
食品リコールを行った場合に、その旨を行政へ届け出ることを義務化。

遺伝子組み換えに関する任意表示制度の改正(2023年4月1日施行)
遺伝子組換え農産物の意図せざる混入率を5%以下に抑えている大豆及びとうもろこしには「適切に分別生産流通管理をしている」旨の表示を、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる大豆及びとうもろこしには「遺伝子組換えでない」旨の表示ができるよう改正。

原料原産地表示制度の開始(経過措置期間:2022年3月31日まで)
原料原産地表示制度とは、輸入品を除く加工食品の中で、最も多く用いられている原材料の産地を表示することを義務付けた制度のこと。

中でも、多くの食品事業者に関係するのは、最後の「原料原産地表示制度の開始(経過措置期間:2022年3月31日まで)」でしょう。先述の通り、国内で製造または加工した全ての加工食品において、重量割合が最も高い原材料の産地の表示が必須になります。

表示方法には下記のようなものがあります。
1. 生鮮食品が原材料の場合にその原産地を表示する「国別重量順表示」
例)名称:ハム 原材料名:豚ロース肉(アメリカ産)、糖類(水飴、砂糖)、…

2. 加工食品が原材料である場合にその製造地を表示する「製造地表示」
例)名称:めんつゆ 原材料名:しょうゆ(国内製造)、砂糖、かつおぶし…

3. 使用が見込まれる複数国を“又は”でつないで表示する「又は表示」
例)名称:ウインナーソーセージ 原材料名:豚肉(アメリカ又はカナダ)…

4. 3か国以上の外国の原産地を“輸入”と括って表示する「大括り表示」
例)名称:ウインナーソーセージ 原材料名:豚肉(輸入)…

この制度は、2017年9月1日よりスタートしていましたが、食品メーカーや販売者などの食品関連事業者等が準備を行うための経過措置期間が設けられており、これらの表示が完璧でなくとも違反にはなっていませんでした。しかし、2022年3月31日で経過措置期間は終了となるため、まだ対応ができていない場合は急いで対応をする必要があります。

企業・個人はどんな準備&対応をする必要がある?

食品表示法という法律で定められ、ミスがあれば食品リコール・回収や罰則の危険性がある食品表示。基本的にはどの項目に対しても同様の注意を払い、すべてにおいてミスのない表示をすることが前提ですが、中でも「アレルギー表示」と「消費期限」については、念入りに対応するようにしましょう。これらは、不正表示があった場合に健康に直結し、社会的問題にもなりやすい緊急性が高い項目といえます。

以下で、アレルギー表示と消費期限それぞれのやるべきことや注意点について解説します。

【アレルギー】
アレルギーの原因となる食材や物質は数多く存在し、その中の一つでも漏れがあってはいけません。製品仕様書に、省令で定められた7品目の「特定原材料」とそれに準ずる21品目のチェックリストを作成し、「含む/含まない」といった形式で一つずつ確認をするようにしましょう。 

hd_0045_1

【消費期限】
消費期限は、製造者自身が科学的、合理的な理由をもって決定しなければならないとされています。この科学的、合理的とは、例えば保存した食品中の細菌類が一定以下であったり、油が酸化していなかったりといった内容になってくるため、しっかりとした専門的な検査が必要不可欠。そのため専用の検査機関へ委託し、そのデータを基に消費期限を決定するのが、最も安全かつ確実な方法と言えます。まずは検査機関に連絡をし、今後の作業の進め方について相談するようにしましょう。
ただし、検査は食品ごとに適した温度設定で、過日ごとに検査を行うため、一定の検査期間がかかります。消費期限として設定したい日数に加え、1.2〜1.5倍の日程が必要になるため、前もって計画的に検査を依頼しましょう。

アレルギーと消費期限について解説しましたが、もちろんそれ以外の項目にもミスがないように努めることが重要です。まずは消費者庁が出している「食品表示実践マニュアル」を参考に、基本的な食品表示の作り方について理解を深めておくようにしましょう。

消費者庁「食品表示実践マニュアル」

食品表示は消費者にとって、安全・安心の証です。
製品やそれを製造している企業の信頼度を増すという意味では、商談や出荷の際に取引先に原材料やアレルギー情報を伝えたり、消費者へ適切な情報を提供するという観点から、自社ウェブサイト等への情報掲示をしたりするのもおすすめです。食品表示を単なる義務として対応するのではなく、安心や安全、誠実さのアピールにつなげることで、商品や企業イメージの向上も図れるでしょう。
万が一、食品表示にミスがあった場合には、迅速な対応が必要です。放置すると、法的な罰則や企業の社会的信用の失墜はもとより、消費者の健康を脅かしてしまう恐れがあります。また、アレルギーや消費期限などミスがあった場合はリコール・回収に加え、2021年6月から行政への届け出が義務付けられています。届け出はインターネットからでも可能です。

食品表示リコール情報及び違反情報サイト(消費者庁)

もっと知っておきたい食品表示法Q&A 

最後に、消費者庁のホームページで公開されている「食品表示基準Q&A」からよくある質問と解答を数点まとめました。これらを参考に、食品表示法への知識を深めていきましょう。

Q.食品関連事業者の行為における「製造」、「加工」とは、具体的には どのような行為を指しますか。
A.「加工」とは、新たな属性を付加する行為であり、加工行為を行う前後で比較して、本質の変更を及ぼさない程度の行為を指します。具体的には以下の行為が「加工」に該当します。

hd_0045_2

Q.スーパーマーケットのバックヤード等で小分け包装した加工食品をその場で販売する場合、食品表示基準に基づく定められた表示は必要ですか。
A.スーパーマーケットのバックヤード等で単に小分け等を行った加工食品をその場で販売する場合は、食品表示基準に定められた表示が必要となります。なお、この場合は、食品表示基準第5条第1項の表の「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」に該当しませんので、原材料名、内容量などの表示をする必要があります。
        
Q.製品の原産国名を表示する必要がある加工食品の考え方について教 えてください。
A.食品表示基準第3条第2項において、輸入品にあっては、原産国名を表示することを義務付けています。ここで言う「輸入品」とは、
① 容器包装され、そのままの形態で消費者に販売される製品(製品輸入)
② バルクの状態で輸入されたものを、国内で小分けし容器包装した製品
③ 製品輸入されたものを、国内で詰め合わせた製品
④ その他、輸入された製品について、国内で「商品の内容について実質的な変更をもたらす行為」が施されていない製品
を指します。

また、景品表示法に基づく「商品の原産国に関する不当な表示」の規定では、国内で生産された商品についてその商品が国内で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるときは「国産」等と表示すること、又は外国で生産された商品についてその商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるときは、その原産国名を表示することが規定されています。

Q.「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」について具体的にはどのような場合が該当しますか。
A.「食品を製造し、又は加工した場所で販売する場合」とは、製造者と販売者が同一で、同一の施設内、敷地内で製造販売することをいいます。具体的には洋菓子店、和菓子店等の「菓子小売業(製造小売)」や、パン店等の「パン小売業(製造小売)」
等がその場で行う食品の製造販売、そうざいや刺身盛り合わせ等をインストア加工し、当該店内で販売する等が該当します。
        
Q.原材料名欄には、アレルギー表示や遺伝子組換え表示を行うこともありますが、原料原産地表示、アレルギー表示、遺伝子組換え表示の順番について、優先順位はありますか。
A.食品表示基準において、原料原産地表示、アレルギー表示、遺伝子組換え表示の順番について特段の規定はありませんが、特定の食物アレルギー体質をもつ消費者の健康危害の発生を防止するアレルギー表示は、他の表示よりも優先して一番最初に表示すべきと考えます。また、特定のアレルギー体質をもつ消費者が適切に判断できるよう、アレルギー表示の対象となる特定原材料等に係る表示の視認性を高めることが望ましいです。

消費者庁の「食品表示基準Q&A」には上記以外にもさまざまな質問と解答があります。疑問がある場合には、まずはこちらをチェックしてみましょう。

出典
消費者庁「食品表示基準Q&A」

発見POINT

  • 食品表示法の改正に合わせ、自社製品の表示を再度チェックしましょう

    食品表示法は時代に合わせて変化し、直近でも8つの項目で改正が施行、または予定されています。これまで大丈夫だったからと放置していると、現行の法律に違反し、リコール・回収や罰則に繋がる恐れがあります。食品表示法に改正があったら、今一度自社製品の表示に該当する部分がないかチェックし、必要に応じて改正法が完全施行される前に対応しておきましょう。

  • 食品表示にミスがあったら迅速に対応。リコール・回収をした場合は、必ず届け出を

    食品表示のミスが一時的な過失で、直ちに是正を行い、社告やWEBサイト、店舗での告知など改善方策を講じれば、行政からの指導で済む場合があります。しかし、一時的な過失でなかったり対応が遅れたりした場合は指示や命令、公表となります。アレルギーや消費期限など健康に関わる表示にミスがあればリコール・回収と行政への届け出が必要です。指示・命令に従わなければ法的な罰則が下る可能性があり、社会的信用失墜や消費者の健康を脅かす恐れもあります。食品表示にミスがないようにするのは大前提ですが、万が一ミスがあった場合は迅速に対応しましょう。

あわせて読みたい

リコール・自主回収関連業務のすべてを代行できます

リコール・自主回収サポートリコール・自主回収関連業務のすべてを代行できます

回収設計からアフターフォローまでリコール・自主回収に関わる業務をトータルにサポートします。

修理品の回収・通販商品の返品等を宅急便ネットワークでお引取するサービスです

宅急便引取サービス修理品の回収・通販商品の返品等を宅急便ネットワークでお引取するサービスです

メーカー様や通販会社様などから商品の引取依頼データをいただき、全国の不特定多数のお客さまから商品の引取・回収を行います。

おすすめ記事

キーワード

S N S

↑