在庫のロケーション管理で業務を効率化! 遊具・ベンチメーカーが行った管理手法のアップデートとは?

在庫のロケーション管理で業務を効率化! 遊具・ベンチメーカーが行った管理手法のアップデートとは?

2022.08.18


 

公共空間に設置されているベンチや各種サイン、公園遊具など、私たちの日常を支える重要な製品を製造・販売する株式会社コトブキ。公的機関の特性から、年度末の時期に納品業務が集中するという課題に悩まされていました。その解決策として同社が導入したのが、ロケーション管理システムとそれによる在庫の見える化の取り組み。当時の課題意識とシステム化の流れについて、IT部の野村直祐さんと栃木工場の齋藤浩史さんにお話を伺いました。

株式会社コトブキ
1914年に東京・数寄屋橋で創業。敷物や家具の輸入販売からスタートし、国内の需要の高まりに併せて自社での連結椅子の製造を開始。東京大学安田講堂、東京オリンピックの諸施設や新幹線関連施設など日本を代表する空間にFRP製品が多数採用される。1970年の大阪万博では太陽の塔の顔部分をはじめ、各会場のイスやベンチなどさまざまな製品に携わる。現在は、ベンチやイス、公園遊具や健康器具、屋内外の案内標識類など公共空間に欠かせない製品を幅広く製造・販売。




年度末ピークとなる業務から、自社の課題を抽出し、業務のシステム化を意識

公共空間にあるベンチや公園遊具などの開発からメンテナンスまでを手掛けるコトブキ。取引先の大半は、公園や駅前広場などの公共施設が占めています。公園に設置する遊具やベンチは、公園の整備工事が完了した後に設置するため、その工事は年度末に集中するのが常です。コトブキの製造・物流部門を支える栃木工場では、年度末シーズンの12~3月の4か月間で、年間総出荷量の実に半分に達すると齋藤浩史さんはいいます。

「出荷のトラック台数が、閑散期は平均で1日5、6台ですが、12~3月は多い日で40台になります。積み込み作業も閑散期だと午前中で終わりますが、繁忙期は夜の7~8時までかかっていました。一つひとつの製品が大きいことに加えて、多品種少量生産を行なっているため、繁忙期の工場の管理は、かなりの混乱となっていました」(齋藤さん)


「特に問題となっていたのが、部品や材料といった在庫品の置き場や管理でした」と語るのはIT部の野村直祐さん。

 
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繁忙期は部品や材料の入荷と製品の出荷量が増え、栃木工場内の十数カ所の倉庫だけでは保管がしきれず、繁忙期の間だけは外部に数カ所 の倉庫を借りるなどして規模を拡大して運用していました。その整理まで手が追いつかず、通路にも部品や材料が溢れかえることもあったといいます。 

 
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「管理が追いつかないため、細かな場所は担当者の記憶や判断に任せるなど、属人化した管理方法になっていた部分もありました。ひとつのモノを探すのにもとても時間がかかっていましたし、無理に動かそうとして破損につながるケースもありましたね」(野村さん)

また、当時も生産管理システムで在庫の管理はしていましたが、納品や出庫のデータを作成・反映するのが当日の夜になり、リアルタイムでの正確な在庫数が分からず、無駄な在庫を生んでしまうという課題もありました

事業の性質上、毎年発生していた繁忙期の工場内の混乱。これらを解決するためには、業務のシステム化を進め、繁忙期にも対応できる抜本的な効率化を図る必要がありました。



「場所」と「進捗」を見える化することで、ムダと属人化を解消

野村さんが取り組んだのが、フリーロケーション管理システムの開発でした

フリーロケーション管理システムとは、倉庫内の在庫情報とロケーション(棚番)情報を登録することで、在庫を管理するシステムです。商品ごとに保管場所を固定する必要がないので、倉庫内のスペースを有効活用できます。

「在庫品には製品名称や仕入先の管理番号などが書かれたラベルを貼っていましたが、書式が一定でなかったり、ひとつだけ書いて他の同一品には書いていなかったりもしていました。そのためまず、全ての在庫品にコトブキの統一管理コードが記載されたバーコードを付けることからスタートすることにしました」(野村さん) 

2万数千もの在庫品にバーコードを貼っていく作業に2カ月半もかかったそうですが、地道な取り組みとシステムによって、「在庫の見える化」が実現したそうです。

バーコードリーダーを使用すれば在庫の場所を特定できるため、工場内で在庫品を探し回る必要がなくなり、ピッキングする時間が30%改善され、ミスも少なくなりました。また、在庫品を頻繁に動かすことがなくなり、部分破損もなくなりました。無駄な在庫を抱えることもなくなり、さまざまなメリットが生まれました」(野村さん)

 
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ロケーション管理により、それまで夜の24時までかかることもあった作業が、繁忙期でも20時には帰れるようになりました。しかし、このようなシステムの導入にあたり、スタッフから理解を得るには時間がかかったといいます。メリットを感じて同意してくれる仲間を見つけ、その仲間から他の人に広げるという地味な努力も必要でした。また、2分かかっていた作業が1分に短縮できたことで効率が良くなったという成功体験を実感してもらい、理解してもらうようにもしました。

「一気に浸透したわけではありません。徐々にです。どのようなシステムを導入するにしても同じだと思います。我々も理解を得られるまで半年はかかりました」(野村さん)

 
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コトブキの効率化への取り組みはフリーロケーション管理システムの導入だけではありません。在庫管理・発送面でも課題意識を持って改善に取り組んでいます。「物流の進捗管理」と「作業工程の進捗管理」を行うシステムも導入しました。

物流進捗管理システムでは、ピッキングから検査、梱包、出荷の工程までを見える化。これにより、ある製品がいまどんな状態にあるか誰でも確認できるようになりました。

作業工程進捗管理システムでは、上記の各工程の中での未着手、作業中、作業完了の工程を表示。現場では、タブレットPCを配布し入力してもらうことで、状況をリアルタイムに確認できるようになっています。

こうしたシステムとフリーロケーション管理システムを連動させることにより、工場内の作業状況がデータ上でいつでも詳細に確認できるようになったのです。

 
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「こうしたシステムは一気に導入したのではなく、全体最適を考慮しながら、用途別に構築・改良・連動のサイクルを現在でも継続し運用しているので、 7~8年はかかっています」(野村さん) 

システムによる効率化は、単にシステムを導入するだけでなく、それによって何を効率化するかという目的や、取り組みへの現場の理解が必要になります。これらにしっかりと向き合い、地道な努力を積み重ねたことにより、大きな業務改善を達成したのです。



全社的なデータ活用と物流の強化で企業の体力を強くする

 コトブキでは、東京の本社や栃木工場を含めて、全国に23営業拠点と3カ所の工場があります。これら営業所と工場間の情報共有は、販売管理システムを活用しています。 


「弊社の製造部門はお客様から直接発注いただくのではなく、営業部門から受注します。営業が販売管理システムに受注情報を入力すると、自動的に栃木工場の生産管理部に通達され、所要量計算を経て製作する工場や工程等を決め、生産体制に入ります」(野村さん) 


 
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 販売管理システム上では、各種問合せ対応に関する情報を、内容編集やコメント機能で共有しており、極力、電話やメールのやり取りは避けて情報の伝達を確実なものにしています。

また、全社として進めているデータ活用の取り組みのひとつとして、「製造本部数値可視化プロジェクト」があります。

これは、本社では受発注や顧客管理でデータを活用することが多くとも、工場ではそうしたデータの活用が上手くできていなかったという反省に基づくものです。データに対する意識が社内で異なっていたんです。業務上のコミュニケーションエラーが発生したり、各所から出てくるデータも意図が違っていたり、整合性が取れないという問題もありました。

各部署が出所の違う数字で話をしていては意味がありません。見る数字を統一することで、共通言語になります。そして、最終的には、自分が欲しいデータは自分で見に行く、という体制をつくり、社員それぞれがデータを活用する風土を築くのが、最終目標です」(野村さん)


コトブキではさまざまな業務上の課題に対し、デジタルやシステムを活用して解決しています。しかし、その取り組みは一朝一夕でできたわけでありません。長期計画で一歩一歩進めてきた結果です。まずは自社の課題を分析し、それに対する最適な解決策をシステムの導入を含めて考え、社内の理解とともに実行していく。コトブキの取り組みはそうした課題解決の進め方の参考になるのではないでしょうか?


 
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発見POINT

  • システム管理による「場所」の把握は業務効率化のカギになる

    繁忙期など業務が集中する時期において、在庫の場所がわからなくなったり情報が属人化したりすると、業務が混乱し、人員を増やしても効果を発揮しにくくなるなど、デメリットが多く発生します。「いまどこに、なにがあるか」をシステムなどで見える化することは、工場・倉庫内のムダな作業をなくし、事故を防ぐためにも必須の対策といえます。

  • データで語る組織づくりが社内のコミュニケーションを活性化する

    社内管理のシステム化やデータ活用が進むことで、それまでアナログな情報や判断によって行われていた各業務も数値や指標など、明確な共通言語のもとでコミュニケーションできるようになります。経営・現場で分断・属人化することなくインナーコミュニケーションが活発化することは、より円滑な事業運営にもつながるでしょう。

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