EC販売を機に業務効率化を実現!作業時間の短縮と品質の向上を両立したノウハウとは?

EC販売を機に業務効率化を実現!作業時間の短縮と品質の向上を両立したノウハウとは?

2022.08.18

アサヤ食品株式会社
1959年(昭和34年)に山梨県で創業したワインビネガー専門メーカー。山梨県産のぶどうを20種類ほどバランスよく使用して醸造し、さらに5年ほど長期熟成させることで、日本の食文化に合うまろやかなワインビネガーを製造している。2016年より、ワインビネガーの最高峰といわれるバルサミコ酢を毎年1,000本限定で製造・販売している。
アサヤ食品株式会社

杉山弘子さん
山梨県で薬剤師として勤務後、2011年に、父の雨宮高明氏が創業したアサヤ食品の社長に就任。ワインビネガーのブランディングに取り組み、2016年に新ブランド「ASAYA VINEGAR」をリリース。2017年よりECサイトでの販売を開始し、販路拡大につなげた。

早川智佳さん
大学卒業後、2019年に新卒として入社。杉山さんと共にECサイトの管理や受注・発送業務、お問合せ対応など、ECサイト担当スタッフとして事業拡大に貢献。商品を活用したレシピ制作やSNSやメルマガでの情報発信などを行い、リピーター獲得を目指している。





 1955年の創業以来、地元山梨県のぶどうを使用したぶどう酢(=ワインビネガー)を製造・販売してきたアサヤ食品。当初は業務用専門メーカーでしたが、道の駅などでの一般流通に進出、そして近年「アサヤビネガー」という新ブランドを立ち上げ、ECにも販路を拡大しました。これまでとは異なる領域への進出に、人員配置やWEBサイトの活用、梱包の工夫、ラベラー・在庫管理システムの導入などさまざまな取り組みを推し進めた同社。その戦略や今後の展望についてご紹介します。


EC販売+新ブランド立ち上げで商品へのこだわりを消費者に直接伝える

 
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 国内唯一の国産ワインビネガー専門メーカーであるアサヤ食品。地元の山梨県産ぶどうを原料として、果実酢の一種であるワインビネガーを製造しています。2016年からは長年培ってきた醸造技術を活かし、ワインビネガーの最高峰といわれるバルサミコ酢を毎年1,000本限定で販売開始。特にバルサミコ酢は6年を超える長期熟成によって日本の食文化に合うまろやかな味わいを実現しており、食品業界などの注目を集めています。

従来は飲食店などに卸す業務用ワインビネガーの製造が中心。一般消費者が商品を手に取れる機会は、山梨県内の土産物店や道の駅などの実店舗のみでした。そんなアサヤ食品がEC販売を開始したのは2017年。老舗のワインビネガーメーカーがEC販売にも力を入れるようになったのは、商品のこだわりや価値を消費者に直接届けるためでした。

 
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「アサヤ食品のワインビネガーやバルサミコ酢の原料は、山梨県産のぶどう100%のみ。添加物は使用していません。また5年以上の長期熟成を行っているため、酢特有のツンとした酸味のない味わいを実現できています。これらは他社の製品と差別化につながる強みなのですが、商品を小売店に卸すだけでは商品の魅力を消費者に十分訴求できていないと感じていました。そこで新ブランド『ASAYA VINEGAR』とECサイトの立ち上げに着手し、商品の価値を伝える取り組みを始めました」(杉山さん)

新ブランド「ASAYA VINEGAR」では、ワインビネガーの味わいや製造方法はそのまま継承する一方で、パッケージなどの外観を一新しました。瓶の形状をワインのようなボルドー型にしたり、高級感のある商品ラベルに変更したりするなど、国内で販売されている一般的な酢との違いが明確に伝わる工夫を施しました。

ECサイトでは、TOPページにワインビネガーの製造工程を写真付きで公開。ホームページにも同様に掲載し、山梨県産ぶどう100%使用や添加物不使用、長期熟成などのアサヤ食品の強みをアピールしました。

 
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「アサヤ食品ではぶどうの仕入れから販売まで一連の流れを自社で行っており、製造に多大な手間と時間をかけています。そのため、他社のワインビネガーと比べると値段は高め。消費者に選ばれるためには、商品の価値を伝える必要があると感じていました。
国内でも徐々にワインビネガーの知名度は高まっていますが、商品が造られる工程はほとんど知られていません。だからこそECサイトやホームページで製造工程を公開することで、丁寧な食品づくりをアピールできると考えました」(杉山さん)

アサヤ食品は商品のこだわりを表現するため、ECサイトやホームページで製造工程を公開。丁寧な食品づくりを訴求することで、価格以外の価値訴求を行っています。



EC化によって実現できた3つの効率化

 
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商品のこだわりを伝えるため、2017年よりEC販売を開始。中小機構(中小企業基盤整備機構)のサポートを受けながら販売準備を進めました。当時のアサヤ食品には、EC販売の経験や専門知識を持つスタッフがいませんでした。初めてのEC販売に取り組む中で見えてきた課題に対し、アサヤ食品では3つの効率化を実現しています。

①EC担当スタッフの配置
EC販売を開始した当初は、サイトの運用や梱包・発送など一連の業務は社長の杉山さんが1人で対応していました。ただECサイト経由の注文数が徐々に増える中で、1人でEC事業を担当することに限界を感じるように。そこで2019年より新卒として入社した早川さんをEC担当スタッフとして配置し、より細やかに対応できる体制を整えました。

 
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 「私が1人でECサイトを運用していた当時、他の業務が立て込むと梱包や発送作業などが遅れることが多々あったので、受注してから発送までのリードタイムが長くなってしまうのが課題でした。EC担当のスタッフを配置してからは、他業務の影響をあまり受けることなく、発送までのリードタイムを以前より短縮。現在は入金確認後、5営業日以内には発送できるようになりました」(杉山さん)

EC担当スタッフを置いたことで、ギフト包装や急ぎの発送など、お客さまの細かなニーズに柔軟な対応ができるように。サービスレベルの向上につながりました。

「電話経由のご注文の場合、繁忙期は電話を取り損ねてしまったり、聞き間違いなどによる認識相違などが発生したりすることもありました。
EC販売では、注文が入ると即座にメールで通知されます。受注にすぐに気付けるので、急ぎのご依頼にも漏れなく対応できるようになりました。またギフト包装など個別のご要望は注文画面の備考欄に記入いただくようご案内しているので、お客さまのご要望を正確に把握できる点もECサイトのメリットだと思います」(早川さん)


②在庫管理システムの導入
ECサイトでは、在庫管理システムの存在が重要です。在庫管理システムとは、在庫の過不足をなくすため、商品の在庫数や入出荷の件数を正確に把握・管理するための仕組み。アサヤ食品ではEC販売を機にクラウド上の在庫管理システムを導入したことで、より効果的な商品販売ができるようになったと語ります。


 
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 「在庫管理システムにより、特に効果を感じたのはバルサミコ酢の販売時です。バルサミコ酢は毎年1,000本限定で販売しており、売れ行きが良くても6年熟成させて完成する商品なので、追加販売できません。
ECサイト導入前はExcelなどのリストで販売数と在庫を手作業で管理していたため、現状の在庫数を確認するのに時間がかかるのが課題でした。在庫管理システム導入後は、システム上で正確な在庫数をすばやく把握できるように。在庫状況にあわせたSNSやメルマガでのプロモーションが可能になり、販売スピードも従来に比べて15%早まりました」(杉山さん)

バルサミコ酢はEC販売だけでなく、2020年頃からふるさと納税の返礼品としての提供も始めています。在庫管理システムによって商品の在庫状況をリアルタイムで把握できるようになったことで、販売チャネルの拡大につながったと言えます。

③ホームページに商品を活用したレシピ掲載
アサヤ食品ではブランディングやリピーター獲得のため、ECサイトとあわせてホームページの運用にも力を入れています。その取り組みの1つが、ワインビネガーやバルサミコ酢を活用したレシピ掲載です。

「ワインビネガーやバルサミコ酢は国内でも徐々に知名度が高まっていますが、『どう使ったらいいのか分からない』という方は多くいらっしゃいます。そこでホームページ上に、商品を使ったレシピの掲載を始めました。
開始当初は手の込んだ本格的なレシピを載せていましたが、ワインビネガーを身近に感じてもらうように手軽で美味しいレシピも掲載するように。商品をかけるだけで作れる簡単レシピはSNSにも積極的に投稿しており、そうした投稿を見てご来店いただいたケースもありました」(早川さん)

 
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山梨県山梨市にある本社では商品販売も行っており、ワインビネガーなどの試飲も可能。そのため、EC販売と比べて客単価が高い傾向にあります。さらにリピーターとなるお客さまの特徴として、「初回は店舗で購入し、2回目以降はECサイトを利用される方が多い」(杉山さん)と語っています。アサヤ食品の事例から、EC販売は新規顧客の獲得につながるだけでなく、リピート利用の受け皿にもなることが分かります。



作業の自動化で梱包のこだわりをさらに追求

 
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 ワインビネガーの新ブランド「ASAYA VINEGAR」立ち上げにあたり、従来の300mlの半分にあたる150mlサイズの瓶を追加しました。少量サイズを加えた背景には、顧客から「普段あまり料理をしないので300mlも使い切れない」といった声が多数寄せられていました。そこで新ブランド創設と同時に150mlの瓶を追加。新たな顧客層の獲得につながった一方で、梱包の作業コストが増えるデメリットが生じました。

「新たに開発した150mlサイズの瓶では、原料などを記載した商品ラベルのほか、ブランド名を記した細長いラベルを瓶のネックに貼り付け、高級感を演出しています。ただ1商品あたりのラベル数が1枚から2枚になったことで、ラベルの貼り付け作業の負荷が増えました。
また瓶の種類が増えたことで、梱包の作業コストも増えました。お客様によって注文内容が大きく異なっており、150mlの瓶と720mlの瓶を一緒に注文したり、箱入りのギフトセットと瓶単体を注文したりする場合も。商品の組み合わせによって梱包で気をつけるポイントも異なるので、梱包の手間は増えましたね」(杉山さん)


 
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 そこで作業コストを軽減するため、アサヤ食品ではラベラー(ラベリングマシン)を導入しました。新ブランドを立ち上げる前は、ラベルはすべてスタッフによる手作業で貼り付けていました。ラベラー導入後は、商品ラベルの貼り付けは自動化でき、ネックに貼る帯ラベルのみ手作業で対応するように。作業負荷を減らしたことで、ラベル数が1枚増えたにも関わらず、導入前より少ない人数で対応できるようになりました。

ただ梱包作業は、商品の品質を左右する重要な工程です。効率化に取り組むことで、配送中に瓶が割れてしまうリスクが高まる可能性があります。そのため作業コストを削減できる業務の効率化を進める一方で、梱包などサービス品質に関わる工程に注力できるフローを構築しています。

商品の魅力を消費者に届けるため、EC販売にも力を入れるようになったアサヤ食品。販路や客層が拡大したことで、配送や梱包における課題発見や効率化につながりました。EC開業の経緯や運用後のメリットは、これからEC事業に取り組む企業のビジネスのヒントになるのではないでしょうか。

発見POINT

  • EC事業の開始がデジタル化の契機にもなる

    2017年より、商品の魅力やこだわりを消費者に訴求するためにECサイトを立ち上げたアサヤ食品。EC担当スタッフの配置によって、受注から発送までのリードタイムを短縮し、顧客の細かな要望にもスムーズに対応できるようになりました。また在庫管理システムによって商品の在庫数を正確に把握できるようになり、在庫状況に応じたプロモーションが可能となりました。EC事業は業務フローの課題を洗い出し、デジタル化による業務効率化のきっかけにもなるといえるでしょう。

  • 自動化でコスト削減できた分、梱包で商品価値をあげる

    アサヤ食品ではブランディングの一環で、少量サイズの瓶の追加や商品ラベルの新調などを実施。顧客層の拡大や商品価値の向上を実現した一方で、梱包の作業コストが増えるデメリットが発生しました。そこでラベラー導入することで作業負荷を減らし、作業時間や対応人数を削減。その分、商品の種類や組み合わせに応じた梱包を丁寧に行う時間を確保し、高いサービス品質を維持しています。

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