米国系戦略コンサルティング会社に入社後、小売や流通、通信販売などの戦略立案に従事。そのコンサルティング経験から得た知識やネットワークを活かし、2000年にフォー・ディー・コーポレーションを創業。忙しい中でも理想の暮らしを叶えることができるサービス「STYLICS(スタイリクス)」を2003年にリリースした。プロのコーディネーターが、500ブランド10万点の家具の中から顧客にあわせて最適なコーディネートを提案。購入の他、上質な家具・インテリアを手頃に手に入れられるレンタルも利用できる。店舗のほかオンラインによる相談も可能。
家具インテリアのインテリアコーディネートショップ「STYLICS(スタイリクス)」を提供するフォー・ディー・コーポレーション。「ひとりひとりの暮らしの夢を形に」をビジョンに掲げ、顧客の間取りやライフスタイル、好みに合わせたインテリアコーディネートを1万組以上に提案し、多くのリピーターを獲得しています。スタイリクスの顧客満足の高さには、どのような背景があるのでしょうか。顧客の利便性を重視した配送・回収の工夫を中心にお話を伺いました。
商品の回収とお届けを同時に実現!「同時回収」実現の経緯と効果

フォー・ディー・コーポレーションが「スタイリクス」をリリースしたのは2003年のこと。一般的に、新生活などで家具の購入や入れ替えを行う際、家具一式を揃えるためには多大な費用がかかる上、イメージに合う家具を探すには手間と時間がかかります。そこで、忙しい中でも手頃な金額で自分に合った部屋づくりができるよう、家具を手頃な価格で利用できるサービスを始めようと考えたのが始まりでした。
スタイリクスで取り扱う家具は、国内外500ブランド10万点以上。家具はすべて新品で、10万円ほどの家具を1ヵ月あたり3,000円からレンタル可能です。どの家具も3年間はレンタル料の総額が商品価格を超えないよう設定されているため、2年ほどの周期で新たなコーディネートへの入れ替えを依頼する顧客もいるそうです。
そうしたリピーターの利便性向上のために取り組んでいる施策の1つが「同時回収」です。
「同時回収とは、レンタル期間が終了した家具の回収と、新たに利用を開始する家具の配送を同じタイミングで行う仕組みです。配送業者がお客さまのご自宅で家具の回収・搬入作業をしている間、お客さまはご自宅内に滞在していただかなければいけません。回収と配送が別日程の場合、お客さまに対応いただく負担が増えてしまいます。そのため、回収と配送を同時に行うことでお客さまの手間を削減でき、顧客満足を向上できます」
この同時回収の仕組みを導入したのは2005年頃。コーディネート相談中における顧客の一言が、同時回収を生むきっかけとなりました。
「家具の回収と配送はそれぞれ別の部門が担当しており、問い合わせ窓口も分けています。そのためお客さまから同じタイミングで家具の回収と新規注文をいただいても、当時は社内で気付くことができませんでした。ある時、コーディネートの相談をされていたお客さまから『回収と新しい家具のお届けを同時にしてもらえると嬉しい』といった話を伺い、お客さまが回収と新しい家具の配送を別日程で対応されていたことを認識しました。そこから利便性向上のためにも、同時回収の導入を決めたのです」

また回収と新規家具の配送の日時を揃えるため、顧客に対して同時回収を希望するか確認する工程を追加。部門間で情報を共有しやすい仕組みを整えました。
「回収・新規配送の問い合わせ方法が電話とメールのみだった頃は、当社から返答する際に同時回収を行うか確認するフローを組み込んでいましたが、Web申込み導入後は、申込みフォームに同時回収の希望を確認する質問項目を入れています。現在も回収と新規家具の発送は別部門が対応していますが、申込時に同時回収の有無を確認するフローになったことで、スムーズな連携が可能になりました」
スタイリクスのように、商品の配送や回収の改善を行うことで、顧客側の負担を減らし、満足度の向上につなげることができます。また配送・回収の見直しは、バックオフィスの効率化やコスト削減などのメリットももたらします。商品・サービスに限らず、配送・回収のUXも定期的に見直すことが、顧客満足を高めるために重要なポイントです。
複数の納品物を顧客へ同時にお届け。顧客満足度につながる調整のポイント
スタイリクスが提供する「コーディネートプラン」では、ソファやテーブル、ベッドなど一度に複数の家具を提案します。部屋のコンセプトや予算に応じて家具を選定しているため、家具によってメーカーが異なる場合がほとんど。家具メーカーが異なる場合、一般的には同時期に注文してもメーカーによって家具のお届け日がずれるものですが、スタイリクスでは家具一式を同じ日時で配送できるよう、細かな納期調整を行っています。
●複数のメーカーの納期を調整し、顧客へ一度にお届け
レンタルする家具の決定後、まず家具のそれぞれの納期をメーカーに確認。顧客の希望する配送日を考慮しながら、各メーカーや卸業者と納期調整を行います。
「家具メーカーや卸業者によって発送時期や納期が大きく異なります。受注生産品のため発注から納品まで数ヵ月かかる場合もあれば、金曜日であれば無料で配送可能など、発注タイミングによって配送料が変わる場合もあります。そのため顧客の希望日時と、配送コストを極力抑えて一斉にお届けできるタイミングを見極め、発注する必要があるのです」

メーカーによって注意すべき点や確認項目は、社内のシステム上で管理。発注時はメーカーごとのチェック項目を確認しながら、発送日の調整を行っています。
発注後、メーカーから発送された家具は配送業者のデポ(物流拠点)に一時保管後、顧客の自宅へと配送されます。このとき、デポで保管する期間を極力短くできるよう、家具の到着予定日を調整しています。
「コーディネートに必要な家具一式を一度にお届けするためには、配送業者の協力が欠かせません。そのため配送業者側の保管期間が長期化しないよう、デポへの到着日にも気を配っています。納期が早いメーカーに関しては家具の在庫を抑えていただき、一番遅い納品日に合わせて発送いただくようご依頼しています。こうした工夫により、お客さまに限らず、メーカーや配送業者とも良好な関係を築けていると思います」
●FAXのやり取りを効率化するため、独自の発注フォーマットを作成
家具メーカーや卸業者に納期の確認や発注を行う際、現在でもFAXでやり取りする場合が多いそうです。配送業者とのやり取りもFAXで対応しているため、フォー・ディー・コーポレーションには毎日大量のFAXが届いています。そこでFAXの見落としを防ぐため、画像データのテキスト情報をデータ化するOCR(Optical Character Reader)を導入。読み取りの精度を少しでも高めるため、独自の発注フォーマットを作成して各メーカーや配送業者とのやり取りで使用しています。

「スタッフの負担を軽減するためにOCRを活用していますが、現時点ではOCRの精度は低く、FAXの内容が読み取れない場合も多々あります。そこで少しでも読み取りの精度を高めるため、当社で作成した発注フォーマットによるやり取りを依頼しています。現在では多くの業者に発注フォーマットを使用いただいており、以前より作業効率が高まりました」
電話やFAXなどアナログのコミュニケーションは、内容確認に手間がかかる上に、見落としや認識齟齬が発生する可能性が高くなります。ただ連絡手段をすぐに切り替えることは難しいので、OCRシステムの導入や、独自の発注フォーマットの使用など、現状の枠組みの中で効率性を高める工夫を行うことが重要といえます。
オンライン接客は顧客層を拡大するチャンス
スタイリクスのコーディネート相談方法は、来店とオンラインの2種類を用意しています。新型コロナウイルス感染拡大により、今でこそオンライン接客は一般的な手法となりました。ただスタイリクスでオンライン接客を取り入れたのはコロナ禍以前のこと。オンライン接客を導入したのは、遠方の顧客でも気軽にコーディネート相談できるようにするためでした。

「お住まいの地域によっては、インテリアコーディネーターに直接相談できる機会がないだけでなく、身近に家具販売店がない場合もあります。そうした遠方のお客さまにも気軽にサービスをご利用いただくために、オンライン接客を取り入れました。店舗にはもともと家具の展示はほとんど行っておらず、3Dシミュレーターなどでコーディネートをご提案しているため、比較的スムーズにオンライン接客を導入できました」
オンライン接客の導入により、コーディネート相談の敷居が下がりました。遠方に住んでいらっしゃるお客さまのほか、海外から日本へ帰国した方や小さいお子さまがいて来店しづらいと感じる方の相談も増加しました。

スタイリクスでは顧客の利便性を重視し、家具の配送や回収、コーディネート提案など、利便性を高める調整を行ってきました。こうした工夫が顧客満足を生み、リピーターの創出につながっています。特に商品の配送や回収のタイミングは、顧客との数少ない接点。商品の配送や回収といった、顧客との数少ない接点を活かして顧客満足度を高める課題解決に取り組むことが重要です。