※掲載記事の内容は取材当時のものです。
ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZO。その物流拠点として商品の管理から発送までを担う「ZOZOBASE」では、「スマイルデリバリー(お客さまに笑顔を届ける)」をミッションとして、日々商品の発送業務が行われています。国内4拠点に所属するスタッフ全体へミッションを浸透させるべく、ZOZOBASEで推し進めたのは「インターナルコミュニケーション」の強化でした。今回は、実際の取り組み事例やその効果と反響、コミュニケーションのあり方について、ZOZOBASEを担当するフルフィルメント本部の方々にお話を伺いました。
スマイルデリバリーの本質は「価値あるサービスを提供する」こと
現在国内4カ所(習志野2拠点、つくば2拠点)で稼働しているZOZOBASEは、「ZOZOTOWN」の事業を支える重要な物流拠点です。ZOZOTOWNで扱う商品が集約され、日々多くのスタッフが携わりながら、お客さまのもとへ商品を発送しています。
そんなZOZOBASEを担当する株式会社ZOZOのフルフィルメント本部が、2019年より新たに掲げているミッションが、「スマイルデリバリー」です。その背景について、フルフィルメント本部を管掌する執行役員である田代さんが教えてくれました。
「当時、コスト削減や業務効率化など、ZOZOBASEとして取り組みたいことは個別に掲げられていましたが、フルフィルメント本部内の方針の軸が曖昧な状態でした。物流拠点やそこに関わるスタッフが増え、部署の環境も変化する中で、改めて本部全体で取り組む目標(=ミッション)を策定しようということになり、「お客さまに商品と『笑顔』を届ける」ことを目的としたスマイルデリバリーの取り組みが始まったんです」(田代さん)
ミッションの策定にあたり、部署の状況を整理した田代さん。自社の企業理念である「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」をもとに考えた結果、ZOZOBASEのあるべき姿を見出せたといいます。
「私たちが大事にすべきなのは、ZOZOTOWNの商品を通じて『価値あるサービスを提供する』こと。ZOZOTOWNで洋服を買ってくれるお客さまはもちろん、ZOZOに商品を預けていただいているブランドさまに対してもそうであるべきだと考えました。そして、価値あるサービスを提供することで、皆さまを笑顔にしたい。そのためには、業務に携わるスタッフも笑顔でなければいけません。そういったところから、お客さまに商品と笑顔を届ける『スマイルデリバリー』という言葉が生まれました」(田代さん)
スマイルデリバリーを波及させるために社内のデザイナーが制作したロゴ
2019年、フルフィルメント本部のスタッフが集まりZOZOBASEのミッションについて検討した
2020年から本格的にスタートした「スマイルデリバリー」の取り組み。ミッション達成に向けてまず取り組んだのは「インターナル」つまり部署の「内側」におけるコミュニケーションの強化」でした。
ミッションを体現するための“ZOZOらしい”インターナルコミュニケーション施策
千葉県習志野市と茨城県つくば市の4カ所に拠点を持ち、総延床面積約40万平方メートルの広大なフロアの中で、日々多くのスタッフが物流業務を行うZOZOBASE。スタッフ数も年々増加し、情報共有には課題を感じていたという田代さん。
「当初は各拠点を回り、管理職のスタッフとミーティングをして現場に方針を伝えてもらっていましたが、温度感までは伝わりづらい。これでは策定したミッションに向けてスタッフ全員で取り組むことはできません。部署全体に、方向性の違いなく情報を共有できる体制をつくりたかったんです」(田代さん)
そこで、ZOZOBASEのインターナルコミュニケーションを支えるツールとして始まったのが、部内報「Smile」です。実際にコンテンツの製作を担当する拠点統括部人財支援ブロックの伊東さんが、その内容を教えてくれました。
「全スタッフが見られるオンライン上のスペースに、部内報のページをつくりました。月に4回、毎週火曜日にテキスト記事や動画コンテンツをアップしています。コンテンツはすべて部内のスタッフで製作。社内のデザイナーにも協力してもらい、4コママンガのスタイルにしたり、イラストをつけるなど、読みやすさも意識しています」(伊東さん)
部内報のページには、多彩なコンテンツが用意されています。例えば、月に1回担当執行役員や管理職のスタッフが登場し、事業の実績や今後の目標、想いなどを動画で共有する「スマイルデリバリー共有会」。課題となっていた全スタッフへ直接情報を共有できる場となっています。
また、スタッフ紹介や各拠点の情報、改善活動の内容の共有など、コミュニケーション重視のコンテンツも用意しました。また、業務に関わる内容以外にも、スタッフのファッションコーディネート企画といったコンテンツも配信しています。
息抜きコンテンツ一例(ファッション好きが多いからこそ大切なアイテムや想いを紹介)
スタッフの活躍を紹介
「業務に関する情報の共有はもちろんですが、部内でのコミュニケーションのきっかけにしてもらえるよう、ちょっと息抜きをしながら見られるようなコンテンツもつくっています。休憩時間などに話題になっているのを見かけるとうれしくなりますね」(伊東さん)
こうしたインターナルコミュニケーションの取り組みにも、「ZOZOらしさ」が表れていると田代さん。
「人任せにしない、自分たちでやっていこうという姿勢がZOZOらしさだと思っています。ZOZOでは創業時から『DIY精神』が受け継がれており、出来る限り自分たちの手でやってみることを大切にしています。インターナルコミュニケーションでも、誰かの言うとおりに動くだけになったり、誰かに任せきりになるのではなく、自分たちでコンテンツをつくり、自分たちの言葉で発信しているというところに、ZOZOらしい取り組みができているなと感じています。そうすることで、単なる情報発信にとどまらず、働き方に対する意識が変わってきていると思うんです」(田代さん)
業務改善につながるさまざまなプロジェクトが現場から誕生
部内報の効果や反響について、現場に近い伊東さんは次のように語ります。
「アンケートによると、部内のスタッフの7割が見てくれているようです。同僚の意外な一面を見られて楽しかったという声も寄せられてうれしく思います。記事を配信すると、各拠点をつなぐチャットツールが賑わうなど、拠点間のコミュニケーション活性化にもつながっていると感じています。自分たちの自事(※)や働き方についても、たくさん意見が出るようになりました」(伊東さん)
(※)ZOZOでは、仕事のことを「仕事(仕えること)」ではなく「自事(自然なこと)」であるという意味を込めて、「自事」と表記します。
また、コミュニケーションの活性化は、2カ月に1度の社内アンケートでもスタッフの働きやすさの指標に向上が見られるなど、さまざまな効果も生んでいると田代さんは言います。
「部内報は、マネジメント側の考えや思いをリアルタイムで伝えられるという点で、コミュニケーションの際にとても助かっています。リアクションが見えやすく、部内でのモチベーションの高まりを感じています。ZOZOでは隔月に一度、スタッフの自事に対する満足度についてアンケートをとっているのですが、その数値も向上しているんです。ミッションに対して主体的に取り組み、それに対して多くの人からリアクションがもらえるようになったことで、評価されているという感覚が得やすくなっているのだと思います」(田代さん)
インターナルコミュニケーションによるスマイルデリバリーの浸透は、スタッフのモチベーションを高め、業務効率化につながるさまざまなプロジェクトも生み出しました。その一例を下記にご紹介します。
・スタッフが集中して作業できる環境づくり (作業スペース改善)
・ヤマト運輸ZOZO支店とともにオリジナルデザインのスタッフ用ジャケットを制作
・ZOZOBASEつくば1/つくば2の休憩室で地域の飲食店の弁当を販売
・地域の花屋と連携し、母の日などにZOZOBASEでお花の出張販売会を実施
「スマイルデリバリーのミッションが浸透するにつれて、以前と比べ、よりお客さまの視点に立った改善活動の提案が増えています。改善活動の件数も2021年度は前年と比べて183%になりました。『配送伝票の二次元コード化』もその一つ。置き配時の情報漏えいの不安を少しでも解消したいという考えから生まれた施策です。自分が属するチームに限らず、ほかのチームや拠点と力を合わせて課題を解決する動きも活発になってきました。スマイルデリバリーとそれを体現するインターナルコミュニケーションの取り組みは、部署内の一体感を生み出し、生産性の向上、業務の効率化にもつながっているといえます」(田代さん)
経営目線から見た業務効率化につながるインターナルコミュニケーションの秘訣
部内のコミュニケーションを活性化し、業務効率化にもつながるインターナルコミュニケーション。その取り組みを進めるうえで、何を意識するべきなのでしょうか。
「マネジメント側が考えていることを、まずはしっかり明確化することが大事だと思っています。長期的な目線で社会情勢も考慮しながら、部内のゴールや課題を明確にし、それをスタッフへ発信、共有していくツールとして、インターナルコミュニケーションは非常に重要なものなんです」(田代さん)
一方で、「広く情報を伝えるツール」と「1対1のコミュニケーション」の組み合わせも並行して行っていくべきだといいます。
「広く一定の情報を伝えるためのツールでは、内容やメッセージがぶれないことが大事。しかし、同じことを伝えても、人によって受け止め方や感じ方に差が出るのは当然です。スタッフの疑問や不安は、実際のコミュニケーションで解消していくことも必要です。ZOZOでは定期的に1対1の面談もやっていますし、私も時間があれば積極的に現場に足を運び、対話することを大切にしています」(田代さん)
今後の展望として、「自分たちの取り組みによって、ZOZOのサービスの価値がどのように上がっているかを伝えるコンテンツを増やしていきたい」と語る田代さん。インターナルコミュニケーションによる「ミッションの浸透→取り組みへのリアクション→スタッフのモチベーションアップ→ミッションへの参加(浸透)」という好循環は、ZOZOBASEの生産性を確実に向上させるとともに、関わるすべての人の笑顔を生んでいきます。