採れたての美味しさをお客さまの手元まで損なわずに保つ!伝統農家のコールドチェーンを活用した品質管理の工夫

採れたての美味しさをお客さまの手元まで損なわずに保つ!伝統農家のコールドチェーンを活用した品質管理の工夫

2022.09.15

白石農園
東京都練馬区大泉で350年続く農家、白石農園。約100種類の野菜とブルーベリーを生産・販売している。野菜は近隣のスーパーで販売されているほか、練馬区内の飲食店へも納品。また、約120区画ある体験農園やブルーベリーの摘み取り農園、学校給食・子供食堂への食材提供、小中学校の体験学習の受け入れなどの活動もしている。近年ではECサイトを通じたアスパラガスの販売も開始した。



生産地から消費者の手に届くまで適切な管理を行うことで、鮮度を保ちながら広域への輸送を可能にするコールドチェーン。東京都練馬区で江戸時代から続く白石農園は、受注・決済・配送を一元化したECサービスを採用することで、生鮮野菜の鮮度を保つコールドチェーン下での商品の発送経路を確保しましたが、収穫後の選別・梱包作業の時間での温度上昇という課題を抱えていました。生産者が丹精込めて結実させた青果の品質をお客さまの手元に届くまで損なわずに保つための視点と工夫、その実現の過程をご紹介します。


コールドチェーンを保つ栽培の工夫と効率化されたEC販売フロー

 
白石農園の白石秀徳さんは、多くの野菜において「鮮度と美味しさは一致するもの」といいます。それは、白石さんがEC販売の商品として選んだアスパラガスではより顕著でした。


実際に野菜の鮮度管理では下記のような課題が起こりやすいとされています。

・収穫後の呼吸による糖や酸の消費
・水分の蒸散によって萎びることや、見た目の品質低下
・その他の整理代謝による追熟・軟化・老化

こうした劣化を避け、美味しさを損なわずに消費者に届けるためには収穫後の管理、とりわけ収穫後の青果の輸送・保存を低温で管理する「コールドチェーン」と呼ばれる手法が必要になります。

「アスパラガスやブロッコリーなどは葉茎菜類に分類される野菜で、まだ成長過程のものを収穫します。そのため呼吸量が多く、品質低下が早くなります。野菜が幼く傷みや劣化なども早いのです。しかし、コールドチェーン下で呼吸を抑えて管理すれば、鮮度を保つことができます。アスパラガスはメキシコなど外国産を店頭で見かけることがあると思いますが、そうした長距離輸送の間もコールドチェーンで管理することで鮮度を保っているわけです」

 
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2019年にアスパラガス専用のハウスを建設した白石さん。都内で育てているという特色から、「東京アスパラガス」という名前をつけました。アスパラガスは根を植えてから育成期間が必要なため、初収穫と出荷は翌年の春に設定し、その間の1年をかけて、配送面と栽培・梱包面でコールドチェーンの準備を進めました。

 
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物流段階では、宅配サービスのクール便を利用して温度管理をすることが必要不可欠です。さらに自社で低温管理した商品を、低温管理の状態を維持したまま短時間で出荷しなければならないことを考え、発送までのスピード感を重視する必要がありました。そこで、一度の依頼で各業務がシームレスに進むショッピングカートや受注・決済に加え、集荷・配送までトータルに管理されたECサービスを利用することにしました。あとは収穫から集荷までの間、とくに日中の作業と保管先となる福祉作業所での低温管理が課題でした」

白石さんは、農福連携の一環として梱包・発送業務を委託している福祉作業所に設置するための保管用冷蔵庫と、作業の安全確保や効率化のためのアスパラガス選別機の導入が必要と判断。また、アスパラガスという新商品の発売やそれに関わる農園の取り組みのPRも兼ねて、その購入費用をクラウドファンディングで募りました。結果、200%の支援を達成し設備を整備。収穫直後から注文先への配送まで、途切れることのないコールドチェーンを実現しました。

 
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作業者目線と消費者目線を両立させたパッケージ

 「『東京アスパラガス』をはじめる際に目指したのは、日用品である野菜の「ギフト化」と、野菜の販売を通じた『地域貢献・農福連携』でした。その目的を達成するために、梱包はとても重要な要素だったといえます」

ギフト品であるアスパラガスの鮮度・品質を保つ上でゴールドチェーン下の管理と同じくらい重要なのが輸送中の「姿勢」だそうです。先端の穂先は、まだ成長中の新芽のため軟らかく、ちょっとした衝撃でも傷んでしまいます。白石さんは「穂先はアスパラガスの命」だと言います。

 
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 太さと重さで選別したアスパラガスは、「東京アスパラガス」のロゴの入った袋に入れられます。EC注文分は、さらに専用箱に梱包し、宅配用の封筒に封入しますが、この専用箱に「命の穂先」を守る工夫がされています。

 
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 「箱の開封口向かって右側に矢印マークと『上』の表記で穂先を向ける方向を示しました。視覚的に確認できるので、間違えず同じ向きで揃えた梱包作業が可能になります。さらに穂先側を上にしたまま宅配用封筒に入れる確認ができるよう外箱をデザインしました集荷後の輸送では宅配会社が注文先に届けるまで、この封筒の天地を維持してくれます。そのため梱包後のアスパラガスはずっと穂先は上を向いたまま負荷を受けることはありません」

 
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 アスパラガスを送る際のパッケージ。アスパラガスの緑をイメージした優しいデザインの中に、
アスパラガスを入れる向きを示す矢印などの実用的な仕掛けも施されている。



こうした視覚的なパッケージデザインは、福祉作業所での作業に配慮し考案されました。現場での作業ミスや顧客からの問い合わせは現在ではほぼないといいます。ほかにも汚れを嫌う作業者がいることも考え、アスパラガスの色をイメージした箱のデザインで汚れを目立ちにくくするなど、消費者へのデザイン性と作業者の実用性を両立させる工夫が施されています。

「作業者への視点から梱包改善を進める中で、現在のような誰にとってもうれしい(=ギフトとしても成立する)デザインができあがったことは、コールドチェーンによる全国向けのEC販売をはじめたひとつの成果といえますね」


 
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全ての販路で同じ美味しさを。農家の思いを実現したコールドチェーン

 白石農園では、定期的にハウスを開放してアスパラガスの収穫体験を実施。夏期であれば、収穫せずに成長させたアスパラガスが青々と生い茂る姿に多くの来園者が驚くそうです。EC注文分以外にも、練馬区内のスーパーマーケットの店頭に「東京アスパラガス」は地元の農産物として並び、中には「白石さんちの野菜」とコーナーを特設している店舗もあります。また、ECをはじめて分かったことは東京の野菜を探している都民の多さだったそうです。

「注文の大半が都内からのものです。中には農園から半径500mくらいの住所の方も。都内という近い生産地の新鮮な野菜を求めている人が多いことが分かります。そのニーズに応えることも、これからの都内の生産者の役割になるのではないでしょうか。コールドチェーンの体制を整えることで、どの販路でも、全国どこにいる人でも採れたてのアスパラガスと同じ美味しさを味わっていただける。そしてそれは、自分がどんな野菜をつくっているのか、その結果が売上や反響として明確に表れることでもある。そう思う度に、生産者として安心感とやりがいにつながります」

 
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 白石さんの野菜作りへの思いと努力が、ECとコールドチェーンの販路を生み出し、美味しさや品質を損なうことなく野菜が消費者に届く。地域との協業、輸送サービスの活用で、お客さまに農業の新しい価値を提供できるようになったことで、白石さんは、今後も新たなチャレンジへの意欲が湧いてくるそうです。



発見POINT

  • 収穫後の“待機時間”をなるべく減らすフローを構築

    青果は収穫したあとも呼吸を続け、鮮度が落ちていきます。厳密な温度管理が難しい野菜の鮮度を保ち、最適な状態で消費者の元に届けるには、収穫から発送まで可能な限り低温で管理し、タイムロスを少なくするフローが必要です。発注データや納品先などがスムーズに共有できるシステムや体制を構築して、各工程の作業時間を短縮し、鮮度を維持したまま最短で発送までのステップを進めていきましょう。

  • 青果の特徴に合わせて梱包に工夫を施す

    デリケートな青果は、コールドチェーンに入れれば品質管理が万全になるわけではありません。どのような状態で移動させるかを青果ごとの特性に合わせて考慮し、その対策が確実にコールドチェーン上で維持されることも必要です。その際、野菜の管理方法に疎い人が作業することも考慮し、梱包のルールをデザイン上で表現することも大事です。

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