サプライチェーンの強化に不可欠な海外赴任。企業に求められる準備と対応

サプライチェーンの強化に不可欠な海外赴任。企業に求められる準備と対応

2021.11.09

サプライチェーン強化のための調達・製造戦略として、海外進出に意欲を見せる企業や、赴任者を増強している企業は少なくありません。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、日本と諸外国の間で人やモノを輸送することにさまざまな障害が生まれてしまった昨今。海外赴任者の引越やそのサポート業務においても、多くのことを考え、対応しなければならなくなっています。

そこで今回は、事業のグローバル展開において不可欠な従業員の海外赴任をテーマに、コロナ禍における赴任者の引越や、そのサポート業務の内容やポイント、人員やノウハウが不足する際の解決方法についてご紹介していきます。

海外引越の準備で赴任者と企業が注意すべきこと

海外赴任の準備段階で注意すべき点は、引越にまつわる煩わしい多数の手続きと限られた時間の中での応対です。
引越の手配をはじめ、労務管理や書類準備、研修、健康診断など、国内の転勤よりも多くの準備が必要になる海外赴任。さらに近年は新型コロナウイルス感染症にまつわる対応も必要になっています。これらの準備は、赴任者だけではなく企業側にも求められるものであるため、双方が密にコミュニケーションを図りながら協力して進めていくことが重要です。

例えば、引越の作業は、

1.打ち合わせ→2.荷造り・引取り→3.国内輸送→4.輸出通関→5.海外輸送→6.輸入通関→7.現地配送

というフローで進行することが一般的ですが、コロナ禍の影響で現地での下見・物件探しがむずかしい、ビザ取得のための書類がすべて揃っていないと引越準備ができないなどの障壁によって、手配や配達が遅れてしまい、赴任後の業務計画に支障をきたしてしまうこともあるでしょう。
また、コロナ禍の現在は、ロジスティクスの乱れが生じていることから、荷物の輸送においてはリードタイムを考慮する必要もあります。海外輸送では航空便や船便での運搬が主となりますが、船便は最終到着地点まで1ヶ月以上の期間を要することもあります。そのため、荷物の梱包時は、赴任後の当面の生活で必要になるものは航空便や手荷物、すぐには使用しないものは船便というような仕分けが重要になるでしょう。

海外引越においてリードタイムの考慮は、見落としがちな要素です。これらのことを踏まえると、海外引越のイニシアチブは赴任者個人ではなく、企業側がリードして進めていくのが理想的と言えます。引越を物流会社に委託する際は、輸送のリードタイム短縮とコスト効率化が図れる、日本と海外拠点を結ぶネットワークを有している一貫輸送での海外引越に実績のある事業者がオススメです。国内に多数の拠点を持っている事業者であれば、国内のリードタイム短縮も期待できます。まずは、赴任者がやることと企業がやることをきちんと整理し、計画に狂いの出ないような準備と体制づくりを進めていくようにしましょう。

従業員の海外赴任でサポート業務担当者がやらなければならないこと

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企業が忘れてはならないのが、海外引越はモノを輸送すると同時に、人を移動させるものでもあるということです。従業員を海外に赴任させることは企業側の都合によるもの。そのため、企業は“人材を動かす視点”に立ち、ゼロから現地生活の基盤をつくらなければならない赴任者のために、赴任前〜赴任中〜帰任時の全期間で、有益なサポートをしていく必要があります。
まずは、サポート業務担当者がすべき海外赴任の管理業務について、主なものを見ていきましょう。赴任前・赴任中・帰任時に分けて整理すると、以下のようになります。

■赴任前

ビザや航空券の手配、スケジュール作成、引越準備といった事務的な業務から、現地生活へ向けた研修やカウンセリングなど、赴任者が赴任国に馴染むための準備を行う必要があります。

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■赴任中

初めて海外赴任者サポートを行う企業の担当者などは、見落としがちな部分でもありますが、赴任者とのコミュニケーションやサポートは、赴任中も継続して行われます。異国の地で安心・安全な生活を送れるように、赴任者をケアし続けていくことも重要な業務と言えます。

 

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■帰任時

引き継ぎなどの業務に忙殺されがちな赴任者が、スムーズに帰国し、日本での業務に移行できるようサポートする必要があります。またコロナ禍にあっては、赴任者への感染症やメンタルケアも重要になるでしょう。

 

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このように一連の業務量は膨大になり、その内容も複雑です。特に赴任中のサポートは予想外のことが多く起こるため、注意を払うべきだといえます。また、赴任者の数が増えるほど、サポート業務担当者の業務が圧迫され進捗管理が困難になる可能性が高いため、早期に協力会社なども含めた、サポート体制を構築する必要があるでしょう。


赴任者の環境を整備するために必要になること

 

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サポート業務担当者の役割は、赴任者が海外で安全に暮らし、仕事で成果を上げるためにサポートをすることです。赴任者は大きな心的負担や不満が伴うもの。赴任の準備は、一定のプロセスを着実に進めるだけでなく、赴任者が快適に海外へ行けるように配慮しなければなりません。

赴任者を全面的にバックアップするためには、3つの要素が重要です。

1つ目は知見です。ビザや就労規定、必要な予防接種、治安や医療、教育などの現地事情は、赴任先の国・地域によって大きく異なります。また、引越や転居先に生じるコストも同様のことが言えます。そのため、赴任者をサポートする上では、まず、その違いや対応方法をしっかりと理解していることが重要。ここで必要となる知見は、担当者が現在持ち合わせていなくても、セミナーへの参加や現地の駐在員へのヒアリング、外部の情報提供会社など、さまざまな方法で可能な情報収集を通じて蓄積していくことができます。赴任者とサポート担当者の双方が安心して業務を進めていけるように、まずは赴任先ごとの適正なマニュアルを制作し、社内や赴任者へ共有できるようにしましょう。

2つ目はレスポンスです。本業や家庭面での対応に追われる赴任者をサポートするためには、密な連絡による情報共有が必要になります。さらに赴任中は、現地法人の担当者からの問い合わせにも対応しなければなりません。これらに迅速に対応するための準備をし、赴任者が気軽に相談できる環境を整えましょう。

3つ目はネットワークです。情報の収集を自社だけで行うのは困難であるため、他社や旅行代理店、コンサルタントと連携することが効果的。円滑に情報共有ができるつながりを構築することが大切になります。
通常の業務に加え、近年は新型コロナウイルスへの対応も必要です。PCR検査やワクチン接種はもちろん、現地の感染状況や隔離期間、対応方法など、最新情報を収集するために、外部との連携はますます重要度を増しています。


 

サポート業務担当者の業務環境を整備するために必要になること

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赴任者だけでなく、サポート業務担当者の負担低減も大切なことです。環境整備によるリソースの最適化や業務の効率化が必要になるでしょう。

効率的に業務を進めるポイントは、デジタルツールを活用すること。スケジュールや進捗状況をシステムで共有すれば、オンライン上で複数のスタッフが常時確認でき、タスクの重複や手配漏れなどを防ぐことができます。また赴任者ごとの情報、書類データをストックしていくことも可能です。自社によるシステム構築が難しい場合は、外部のソリューションを活用する方法もあります。 

また、煩雑かつ多様な赴任サポート業務の数々は、自社のリソースだけでこれらに対応するのは難しいため、外部業者と協力しながら業務を進めていくことが現実的と言えます。ビザや航空券の手配、荷造りから荷解きまでがワンパッケージとなった引越、赴任先情報や異文化コミュニケーションに関する研修など、そのサポート内容はさまざま。外部業者にはノウハウが蓄積されているので、社内に専任担当者がいない場合や、業務の効率化を目指す場合は有効な手段と言えるでしょう。 

また、外部業者や外部サービスを利用する最も大きなメリットは、サポート業務担当者が、やるべき業務に集中できることです。たとえば、社内スタッフは、赴任者との連携、マニュアルの構築、重要な事項の確認などを担い、外部業者にシステムの構築や外部機関との手続きを委託するといった形をとることができます。 

適切な委託先の選び方は、自社の課題によって異なります。赴任者が少数の場合は、定額で一任するのではなく、赴任や帰任のタイミングのみ発注できるサービスを選ぶとよいでしょう。委託する業務内容も、手続きが煩雑な国のビザ取得、専門性が必要になるガイダンスや研修など、自社では対応しきれないものに絞ることが有効です。 

委託内容ごとに発注先を分ける方法もありますが、一括でサポートをしてくれるサービスを選ぶこともできます。知見が不足する業務の相談や、適切なプランの設定、連絡や経費管理の一本化など、多くのメリットがあります。
各サービスは、前述した赴任者を全面バックアップするための3要素である「知見・レスポンス・ネットワーク」へのニーズを満たしてくれるもの。とりわけ「レスポンス」は、赴任者と企業のコミュニケーションや緊急時の応対に不可欠な要素であるため、選定時のコアポイントのひとつにするとよいでしょう。

 

課題解決のための海外赴任サポートQ&A

最後に、海外赴任者サポート業務において、人事・総務担当者が直面しがちな課題や疑問と、その答え・ヒントをいくつかQ&A形式でまとめてみましたので、これからの業務や改善の道しるべにしてみてください。

 

Q 中小企業における赴任者サポート業務における課題には、どのようなものがありますか? 

A 大規模な企業では、各業務の専任スタッフがいるため、比較的スムーズに進みますが、中小企業の場合は、少数のサポート業務担当者スタッフで担わなければならないため、リソースの不足が最大の課題と言えるでしょう。
海外人事の専属担当者がいない場合は、通常の業務と並行して海外赴任業務を行うことになり、十分にサポート業務を行うことができません。そのため、海外の情勢やビザの取得方法など最新の情報を得ることに手間と時間がかかってしまったり、各国の赴任者や現地法人からの問い合わせの多さに、業務が追いつかなくなってしまい、業務効率が著しく低下してしまうことが少なくありません。
 

Q 海外赴任者を出すのが、初めてなのですが、初心者が見落としがちな業務やミスをしやすい業務を教えてください。 

A ビザ取得や健康診断などで、法令や規定と異なる対応をしてしまうケースが多いです。「辞令後にビザの取得条件を満たしていないことが発覚した」「赴任の時期が変更したが、出国前6カ月以内の健康診断を受けていなかった」といったトラブルはよくあるので注意しましょう。


Q 初めての海外赴任者対応をする場合、最初に何から始めていけばよいのでしょうか? 

赴任規定(給与、手当、保険、住宅、一時帰国など)の作成、ビザや就労許可のカテゴリーと取得方法、スケジュールの確認から始めるのがよいでしょう。現地の情報収集が難しいと感じるかもしれませんが、多くの企業は、現地や日本のコンサル会社などを利用して情報収集を行っていたり、情報収集業務そのものを協力会社に委託していることも多いので、そのような形も検討してみてください。
赴任者サポート業務を行う上で重要になるのは、スケジュール作成および管理、ビザや現地の就労許可取得のための赴任者や赴任先会社との調整、給与や保険等の労務関連業務など、並行して様々な業務を確実に遂行していくことです。
そのため進捗状況をわかりやすく管理するためのツール、業務を簡潔にするためのマニュアルや社内体制の構築または代理店(旅行代理店、コンサルなど)の利用、情報収集のための他社や代理店との繋がりなどを持てるようにするとよいでしょう。


Q 国や地域によって、サポート業務の内容はどのように変わるのでしょうか? 

A ビザや就労許可取得のための必要書類、日数が大きく異なります。また、自動車や免許証の取り扱い、危険地手当や物資輸送、言語に応じた語学研修の手配、子どもの学校入学のための予防接種なども確認しましょう。


Q 物流業者に赴任サポート全般を依頼することはできますか。 

A できます。全体コストや業務の効率を図れる点はもちろん、国内外に拠点があり、海外引越のノウハウもあるため、迅速・的確なアドバイスを受けられる点も魅力の一つと言えます。また、物流会社の中には、スケジュールやタスク進捗、書類、赴任者の情報などを一元管理できる専用システムを持っている業者もあるので、それを利用すれば、業務効率化や赴任者への迅速なレスポンスにつなげることができます。


発見POINT

  • 海外引越は、コロナ禍の海外輸送の乱れやリードタイムを見越した企業のサポートが重要

    コロナ禍の現在は、ロジスティクスの乱れが生じていることから、海外へのスムーズな輸送を実現することが難しくなっています。そのため、引越荷物を輸送する際は、赴任後の当面の生活で必要になるものは航空便、それ以外のものは船便といった、リードタイムを考慮する視点が重要になります。また、そのほかのプロセスにおいてもロジスティクスの考えが活用できるため、サプライチェーン担当者の知見なども活用しながら企業がイニシアチブをとって海外引越業務を進めていくとよいでしょう。

  • 海外赴任サポートで不可欠なのは、“知見・レスポンス・ネットワーク”

    多岐にわたる海外赴任業務は、赴任前・赴任中・帰任時に分けて整理し、確実に進める必要があります。その中で重要になるのは、蓄積された「知見」、赴任者や赴任先会社への対応における「レスポンス」、情報を収集するための「ネットワーク」の構築の3点。これらは、不測の事態への対応を含めた赴任者の安心・安全の担保だけではなく、赴任者サポート担当者の業務効率化にもつながるものであります。万全なサポート体制を整備しながら、システム活用などで円滑化を図りましょう。

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