ニューノーマルな働き方はバックオフィスのDX化のスモールサクセスから始まる!?

ニューノーマルな働き方はバックオフィスのDX化のスモールサクセスから始まる!?

2021.10.26

新型コロナウイルス感染症の流行に端を発するテレワークの増加など、生活様式の変容によって企業DXの重要性や必要性が再認識されています。
その一方で、「DXの必要性は感じているが、何から始めればよいかわからない」「DX推進をしたいが、経営層や従業員の理解が得られない」といった悩みを抱えている方も少なくなく、2020年12月に経済産業省が公表した「DXレポート2(中間取りまとめ)」によると、大部分の企業が業務におけるDXに着手していない、散発的な実施にとどまっている状況とのこと。

なかでもバックオフィス業務のDX化は、ニューノーマルな働き方に直結し、比較的着手しやすいものであるにも関わらず、営業やマーケティング、顧客対応といった“直接的な”業務よりも後回しにされがちな傾向があり、DX人材の不足や既存の商習慣といった障壁も相まって、なかなか変革が進まずにいる状況ではないでしょうか?
必要に迫られながらも、なかなかできていないバックオフィスのDX化。DXを導入し、ニューノーマル時代の働き方に順応するためには、どのような考え方で臨めばよいのでしょうか。

日々の業務の効率化を実現するDXとは。

日々の業務の効率化を実現するDXとは。

まず抑えておきたいのが、DXは“手段”であり、“目的”ではないこと。たとえばバックオフィスのDX化を進めてテレワークを定着させたとしても、その最終的な目的は「効率的で多様な働き方を実現すること」や「注力すべき業務にリソースを活用すること」などであり、テレワークを実現させることがゴールではありません。テレワークそのものによって企業価値が向上するわけではないことを想像すると、DXは“手段”であり、“目的”ではないということが、より明確におわかりいただけることでしょう。

DXを“目的”として捉えてしまうと、推進を図る際に経営層や従業員の理解を得られず、停滞や頓挫の原因になります。「なぜ必要なのか」「どのようなメリットや効果が見込めるのか」と、さらに先にある目的を抑え、手段として活用するマインドこそが、最も重要だといえます。

ではまず、なぜビジネスにおいてDXが必要になるのか、その背景から見ていきます。

バックオフィスのDX化を検討するにあたり把握しておきたいのが、国が推進していることで、企業のDX化がビジネスシーンで、大きなトレンドとなっていることです。

最も大きな動きは、経済産業省が2018年に「DX推進ガイドライン」を発表し、DX推進のための経営のあり方やITシステムの構築のガイドラインを示すとともに、2020年からはDXに取り組む企業を「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定する取り組みを開始したこと。
さらに2021年9月に新設されたデジタル庁は「社会全体のDXの推進」を掲げており、今後は教育や医療、文化など、社会のあらゆるシーンでデジタル化が進んでいくことが予想されています。

そして、こうした動きは、ビジネスの現場にも着々と浸透しています。

例えば物流業界では、機械化・デジタル化が官民の協力のもと進められており、2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」では、「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化」が明記されています。この物流DXには、自動走行やロボットの導入といった先進技術だけでなく、手続きの電子化といった全てのビジネスに関わるプロセスの改革も含まれており、製造や小売、EC事業者など、サプライチェーンを担うあらゆる事業者の現場対応が求められている状況にあります。

これらの動きから、ビジネスにおけるDXは今後いっそう加速するものと考えられ、ビジネスパーソンは、企業の規模を問わず、その対応に迫られることになることが推測されます。顧客企業や関連業者がDX推進をする中、「当社は紙で業務を管理します」と、DXに反する姿勢をとることは、ビジネスにおけるリスクにもつながることは、容易に想像できるはずです。

こうした外圧的な必要性だけでなく、自社の競争力を高める上での有効な手段であることもポイントです。DXによる業務の効率化は、人材や時間、お金といったリソースの最適化に貢献します。デジタル化によって書類発送の手間が省け、本業に集中できるといった例もその一つです。また、ニューノーマルな働き方にマッチし、従業員が働きがいを持って業務にあたることは、従業員満足度(ES)の向上や人材の確保、生産性の向上にも直結します。「中小企業だから」「現場だから」と、絵空事や他人事のように捉えず、先々のメリットを見据えて積極的にDX化に取り組むマインドが、これからの時代のビジネスパーソンには必要になるといえるでしょう。

アナログ業務をデジタルシフトしていくことが社内のメリットに繋がる

アナログ業務をデジタルシフトしていくことが社内のメリットに繋がる

とはいえ、前述した通り、現場レベルではなかなかDX導入が進んでいないのが現状です。経営規模が小さく、目の前の業務に追われてしまっている中小企業ならなおさらかもしれません。

それでも、企業がDX導入の必要に迫られているのは事実。では、そのような状況下で、どのようにDX化を進めていけばよいのでしょうか?

おすすめは、まず身近な業務の中から簡単にDX導入できるものを見つけて、その効果をチームで共有していく「スモールサクセス式」の導入です。簡単なものから着手して成功体験を積み重ねていくこの方法は、効果を実感しやすいこともあり、チームや社内にDX推進の機運を高める効果も期待できます。
AIやビッグデータを活用し、ビジネスモデルを大胆に改革することだけがDXではありません。これまでアナログで行っていた通常業務を少しずつデジタル化することも、中長期的に見ると大きな前進であり、立派なDXといえます。

スモールサクセスを実現させるのに最適な対象は、総務や経理の業務に代表されるバックオフィス部門の業務。効率化やリソースの最適化が必要とされていながら、“はんこ出社”に代表されるように、DXが遅れてしまっている部門ですが、書類やデータの管理などDX導入しやすい業務が多いことや、多くの人が関わる業務で変化や効果が見えやすいことから、DXの最初の一歩としては最適だといえます。

業務の効率化やテレワーク推進のために書類のデジタル化を始める企業が増加中

業務の効率化やテレワーク推進のために書類のデジタル化を始める企業が増加中

バックオフィス業務のなかでも、最も身近であり、DXを進めやすいのがペーパーレスやハンコレス、テレワーク推進などにつながる「書類のデジタル化」です。
ここでいう書類とは、契約書や請求書、経費精算、勤怠管理の関連書類など、さまざまなものが含まれます。
書類のデジタル化のメリットは、煩雑な手続きを解消し、効率化やテレワーク推進を実現することだけではありません。印刷にかかる経費の節約、書類の保管スペースや管理コストの削減、紛失や災害などのリスク低減、環境負荷軽減など、多くの効果が期待できます。また、他のDXと比べてコストやスピードの面で優れているという面も推奨の理由の一つ。スモールスタートかつスモールコストで、これらのメリットを期待できるという点から、現在DX化を書類のデジタル化から始める企業が増加しています。
また、これらは結果として、本業務への注力、売上向上、人材の確保・定着、ガバナンス強化にもつながるため、その効果は、バックオフィス部門にとどまらず、全社的なものになるともいえます。

書類利用頻度の高い書類からデジタル化を進めれば成果や社内浸透にもつながりやすい

では、スモールスタートで書類のデジタル化を進める場合、具体的には、どのような書類が適しているのでしょうか。

最も手をつけやすく、効果を感じやすいのは、請求書や明細書といった日常業務で利用頻度の高い手続き書類でしょう。紙で発行していたこれらの書類を統一フォーマットでデジタル化して、送付先にデータ送信するだけで、郵送料・出力代などのコスト削減、経理処理上手間の削減、元データの一元管理など、さまざまなメリットが期待できます。
昨今は、請求書や明細書などの書類をPDF形式で電子化し、Web上で作成や閲覧などができる「Web請求書サービス」を提供している事業者もいますので、より負荷をかけずにデジタル化を進めたいという場合は、利用してみましょう。

また、上記の書類と同様に、経費精算処理の手続きも効果が出やすいものといえます。全従業員の業務において発生する経費を毎月申請書で集約し、経理担当者による金額や宛名の確認や、管理担当者による承認・押印など、さまざまなフローでリソースを浪費している企業は多数あります。しかし現在、その多くはデジタル化することが可能で、申請書の管理システムを構築し、スマートフォンで各従業員が領収書を撮影、タイムスタンプなどを活用しながらデータに集約すれば、大幅な効率化を見込めます。

さらに、2020年度の税制改正でバックオフィスの効率化のために電子帳簿等保存制度の見直しがされるなど、経理関連書類の規制緩和も徐々に進んでいます。今後も法改正によりDX推進がしやすくなる可能性が高いので、税理士などとも相談の上、検討を進めるとよいでしょう。

SaaSサービスの活用でバックオフィス業務全般を総合的に効率化

DXを進めるにあたり、「専門的技術を持つ担当者がいない」「社内のシステム環境が万全ではない」といった課題もあると思います。こうした場合は、外部の事業者が提供するクラウドサービスなどに代表されるSaaSサービス(「Software as a Service」の略称で、提供者側で稼働しているソフトウェアを、利用者がインターネットを介して利用するサービス)を活用することをおすすめします。

外部サービスを利用するメリットには、使い勝手のよさに加え、状況に応じたアップデート対応、充実したサポート体制、無料で利用できるものもあるという導入コストの安さ、スモールスタートから始められるといった点などがあります。

例えば、前述した経費精算処理のシステムは、現在多くのクラウドサービスが提供されています。一連のフローをオンラインのプラットフォームで完結でき、承認や決裁など、企業ごとのルールに沿ったカスタマイズも可能です。また、AIによる領収書の自動読み込みや、法人向けクレジットカードや乗り換え案内サービスとの連携による経費の自動入力、会計システムとの連動など、多彩な機能も活用でき、バックオフィス業務全般を総合的に効率化することができます。

経費精算処理以外でも、あらゆる業務のデジタル化をサポートするソリューションが増えています。
例えば、物流会社が提供する「送り状発行」業務のサポートサービスもその一つ。実は多くの物流会社は、手書きの伝票のほかに必要項目を埋めるだけで、さまざまな荷物に対応した送り状を発行できる専用システムを保有しており、宛先の情報をデジタル化しておくだけで、簡単かつ迅速に大量の送り状を発行できるサービスを提供しています。伝票番号の管理・追跡が容易になるほか、他社の受発注サービスや請求書発行サービスとAPI連携できる場合は発送伝票の作成の手間や発送状況の確認がしやすくなるなど、受発注業務における業務効率化も期待できます。

現在は、多くの事業者がさまざまな業務を対象にしたデジタル化の導入・運用サポートを行っているので、自社リソースが不足している場合は、これを頼ってみるのもオススメです。その際は、自社で課題となっている業務を洗い出し、自社のビジネスやシステムにマッチした効果的なサービスを見つけ出しましょう。

身近な業務から始めるDX推進。たった一つの業務フローをデジタル化するだけでも、将来的にはさまざまな効果を見込めます。一つずつスモールサクセスをつくり、ニューノーマル時代の第一歩へと踏み出してみてください。
また、最近はバックオフィスの効率化やDX化をテーマにしたビジネスセミナーも活発に行われています。スモールスタートの計画や実践を、より具体化するために、まずは無料のセミナーへ参加し有益な情報を取得するというのも一つの手です。そのようなアクションは、ニューノーマルやDX化への対応の最終的な目的である、企業の売上拡大へのヒントとなるでしょう。

発見POINT

  • バックオフィスのDX化は企業経営全体にメリットをもたらす

    スモールスタートかつスモールコストで始められるDXの導入は、書類や手続き、登録業務の効率化やテレワーク推進といった業務担当者にとっての課題解決につながる実利的なメリットが期待できます。また、これらのメリットは結果的に、本業務への注力、売上向上、人材の確保・定着、ガバナンス強化にもつながるため、その効果は、企業経営全体におよぶことになります。

  • スモールスタートの第一歩は業務上の課題解決の知識習得から

    業務課題を解決するための手段はさまざまです。まずは情報のリサーチや資料収拾、セミナーへの参加などで、有益な情報や知識を習得して自身の業務に最適なアプローチを精査してみましょう。そうすることで無理や無駄がなく課題改善のフェーズに移行することができるようになります。このような一つ一つの積み重ねが、DXの定着につながっていくことになるでしょう。

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